改訂新版 世界大百科事典 の解説
イーストサイド・ストーリー
east side story
フランスのコパンスY.Coppensが唱えた〈アフリカの大地溝帯の東側で人類が誕生した〉という仮説シナリオ。およそ800万年前から,大地溝帯付近の造山運動が盛んになり,大西洋の水蒸気を含んだ偏西風が大地溝帯の山脈にぶつかって雨を降らすようになったので,東側では気候の乾燥化が進んだ。その結果,森林が徐々に草原に変わり,類人猿の祖先は死に絶えてしまった。一方,人類の祖先は二足歩行により草原で生活の場を開拓して人類に発展した,という内容。名前はミュージカル《ウェスト・サイド物語》のもじり。ただし,人類の祖先は,森の中ですでに立ち上がっていた,大地溝帯の東西で気候の違いは明瞭ではなかった,大地溝帯のはるかか西にあるチャド共和国で猿人化石が発見されているなどの批判も多く,現在では支持を失っている。しかし,環境変化が人類進化の大きな要因であるとの基本的アイディアは評価できる。
執筆者:馬場 悠男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報