アオイドス(その他表記)aoidos

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アオイドス」の意味・わかりやすい解説

アオイドス
aoidos

ホメロスやヘシオドスらの初期ギリシア叙事詩のなかに登場する職業的詩人=吟誦者の称。神儀や葬礼において祭祀歌や挽歌を歌うこともあり,また王侯貴族の宴に招かれて竪琴を弾きながら,客人の求めに応じて神話や英雄譚を即興的に物語る技芸をもつ。『オデュッセイア』のなかの,トロイ木馬や,戦神アレスと愛の女神アフロディテとの恋物語は,その例である。ホメロスの叙事詩自体の示す口誦詩的特色はアオイドスの伝統に負うものとみなされている。口誦詩の伝統が衰退したのちにも,特にすぐれた伝説的詩人の称としてアオイドスという言葉が用いられている例も,テオクリトス牧歌などにある。

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世界大百科事典(旧版)内のアオイドスの言及

【ギリシア文学】より

…VIおよびVIIについては〈ビザンティン文学〉とこの項末尾の記述を参照されたい。
【I叙事詩成立の時代】
 ミュケナイ時代の記録には文学の痕跡は発見されていないが,前8世紀以降台頭するホメロス,ヘシオドスらの叙事詩文学の最初の萌芽は,前12世紀以降の〈暗黒時代〉に諸地を歴遊した吟遊詩人(アオイドスaoidos)の語り物技芸に発する。今日伝わる両詩人の作品は初期イオニア方言をおもに用いた職業的詩人たちの間で口承の語り物として成立し,彼らの間で代表的レパートリーとして発展・熟成の過程をたどった。…

※「アオイドス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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