アオイドス(英語表記)aoidos

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アオイドス」の意味・わかりやすい解説

アオイドス
aoidos

ホメロスやヘシオドスらの初期ギリシア叙事詩のなかに登場する職業的詩人=吟誦者の称。神儀や葬礼において祭祀歌や挽歌を歌うこともあり,また王侯貴族の宴に招かれて竪琴を弾きながら,客人の求めに応じて神話や英雄譚を即興的に物語る技芸をもつ。『オデュッセイア』のなかの,トロイ木馬や,戦神アレスと愛の女神アフロディテとの恋物語は,その例である。ホメロスの叙事詩自体の示す口誦詩的特色はアオイドスの伝統に負うものとみなされている。口誦詩の伝統が衰退したのちにも,特にすぐれた伝説的詩人の称としてアオイドスという言葉が用いられている例も,テオクリトス牧歌などにある。

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