木馬(読み)モクバ

デジタル大辞泉 「木馬」の意味・読み・例文・類語

もく‐ば【木馬】

木で馬の形に作ったもの。子供の遊びなどに用いる。「回転木馬
器械体操に使った用具の一。木材で馬の背形に作ったもの。現在の跳馬に相当。
昔、木製の馬形の背を鋭くとがらせたものに罪人をまたがらせ、両足に石をつり下げて拷問の具としたもの。

きんま【馬】

きうま(木馬)

き‐うま【木馬】

木材を山中から搬出するための用具。堅い材でそりに似た形に作ったもの。丸太を並べた上を滑走させる。きんま。

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精選版 日本国語大辞典 「木馬」の意味・読み・例文・類語

もく‐ば【木馬】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 木製の馬。昔、乗馬の練習に用いたもの。〔日葡辞書(1603‐04)〕 〔南史‐斉本紀・下・廃帝東昏侯〕
  3. (くら)をかける具。木で馬の背の形に作ったもの。鞍掛(くらかけ)
    1. [初出の実例]「木馬之事古代の書に所見なし慶長以来の物なるべし」(出典:随筆・貞丈雑記(1784頃)一三)
  4. 昔の拷問の具。背を鋭くとがらせた木の馬。これに罪人をまたがらせ、両足に石をつり下げた。
    1. [初出の実例]「人をあざむきすかすは其咎かろからぬ事也とて、雑色所へ下して木馬にのせんとする間」(出典:十訓抄(1252)七)
  5. 体操用具の一つ。木材で作った馬の背型の模型。縦または横からかけ寄り、上に手をついて飛び越えたりなどするもの。
    1. [初出の実例]「中学校の運動場で木馬(モクバ)を飛び越えることに自慢して居た僕も」(出典:馬上の友(1903)〈国木田独歩〉)
  6. 遊戯具。木または金属で馬の形に作られ、上下に動くようになっている。
    1. [初出の実例]「吾等の学校には、ひろきうんどうばありて、其中に、木馬とぶらんことあり」(出典:尋常小学読本(1887)〈文部省〉二)

き‐うま【木馬】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 乗馬訓練のための木製の馬。もくば。〔ロドリゲス日本大文典(1604‐08)〕
  3. 拷問具の一つ。四脚の踏み台に似て、上面を山形に作り、その上にまたがらせ、足に石などのおもりをつけて用いる責め道具。もくば。
    1. [初出の実例]「何責が可からうな、木馬(キウマ)に乗せうか、水をくれうか」(出典:浄瑠璃・仏御前扇車(1722)二)
  4. 木材を搬出するための用具。カシ、ミネバリなどの硬材を用いて、橇(そり)に似た形につくったもの。これに木材を積んで、木馬道(きうまみち)の上を集材地へすべりくだる。きんま。
    1. [初出の実例]「木樵の歩く道があった。それは、伐採した木を出す時に、木馬(キウマ)を通らせた名ごりであった」(出典:飢餓海峡(1963)〈水上勉〉五)

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改訂新版 世界大百科事典 「木馬」の意味・わかりやすい解説

木馬 (もくば)

木製の馬の玩具。大型のものは子どもが乗って遊ぶ。〈トロイアの木馬〉の伝説があるように古くからあった。ヨーロッパでは19世紀初期に,木馬の脚部に弓形の枠を取りつけ,前後に揺り動かして,これにまたがっている子どもに馬が走っているような感じを与えるロッキング・ホースrocking horse(揺り木馬)がつくられ,流行した。このほか動かないもの,手で揺り動かすもの,車つきで引いて移動させるものなどがある。木馬を数多く取りつけ回転させて遊ばせるのが遊園地などに設置されているメリーゴーラウンドである。そのほか小銭を入れると馬が上下に動いて回転する電動式のものがある。厚板に馬首,4本足をつけたもので,最近はプラスチック製が多い。日本にも古くから武家の児童には乗馬練習用のものがあり,木馬と呼んだ。またこれに車をつけて引いて遊ぶ玩具もつくられた。名馬の産地三春地方(福島県)には子育て信仰と結んだ三春駒と呼ばれる木馬(きんま)がある。
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木馬 (きんま)

そりの一種。ただし,雪の上ではなく,土の上で用いる。カシ,ミネバリなどの硬材でつくり,形態ははしご状である。キウマなどとも通称され,ほぼ全国的に分布するが,飛驒・信濃などの山岳地帯に濃密である。用途は主に木材の搬出で,そのため大型のものが多く,長さ2~3mに達するものもまれではない。木馬は,必ずキンマミチ,キウマミチなどと呼ばれる専用通路を通すが,ここには鉄道の枕木のように丸太が並べられている。運搬するときは,荷物を積んだ木馬の先端に人が1人立ち,速度や方向などを調節しながら操ってゆく。これはかなりの熟練を要する作業で,一息に進める距離は2kmほどとされている。起源は相当古く,すでに古墳時代において使用が確認されている。大阪府藤井寺市の仲津媛古墳の陪塚で発見された,修羅(しゆら)がそれである。
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木馬 (きうま)

木馬(きんま)

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普及版 字通 「木馬」の読み・字形・画数・意味

【木馬】もくば

木製の馬。また、スキー。〔茶香室叢鈔、二、八大王之子〕新書の回鶻列傳を考ふるに云ふ、厥(とつけつ)の三部、木馬に乘りて冰上を馳す。版を以て足に(ふ)み、木を屈して腋を(ささ)へ、蹴れば輒(すなは)ち百、此れを木馬と言ふ。

字通「木」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「木馬」の意味・わかりやすい解説

木馬(もくば)
もくば

木製の馬。西欧ではトロヤ戦争のおり、ギリシア連合軍がトロヤ軍を破った伝説に木馬がみられる。19世紀初頭には子供の玩具(がんぐ)として弓形の枠の台に木馬を取り付け、前後に揺り動かすことのできるロッキングホースrocking horseが広く用いられた。また車付きで引っ張ることのできる木馬もみられた。これらのものは、日本でも明治時代から上流家庭に入った。

 日本では江戸時代に、武士の子弟の馬術の練習用としての木馬があった。木馬に、手綱(たづな)、障泥(あおり)などをつけ、鐙(あぶみ)の乗り降り、鞭(むち)の当て方を練習した。馬術を習うのに木馬を用いることは中国でもあったといわれている。また木馬は、乗馬に使用する鞍(くら)を掛けておく道具として用いられ、鞍掛とよばれた。

 木馬を拷問の道具として使用することもあった。馬の背の形につくったものに罪人をまたがらせ、両足に石を釣り下げた状態にした。

 現在、遊園地などにみられる、木馬を何台も取り付けたメリーゴーラウンドmerry-go-roundは、かつて東京・浅草の木馬館にみられ、子供たちに人気を博していた。

[芳井敬郎]


木馬(きうま)
きうま

積雪の少ない地方で夏季に用いる木材運搬用のそりの一種で、「きんま」ともいう。カシ、ミズメ、ケヤキ、ナラなどの硬木でつくった2本の親骨に3~5本の横木を取り付けた梯子(はしご)形のそりである。勾配(こうばい)が6度程度を運搬限度とする普通木馬と、十数度まで運搬可能の単軌木馬、ワイヤ木馬などがある。木馬を用いての木材運搬を木馬運材という。直径5センチメートル、長さ1~1.5メートル程度の小丸太あるいは割り木を盤木(ばんぎ)として約60センチメートル間隔に敷き並べた、主として下り勾配の木馬道上を、木馬に木材を積載して人力で引っ張り滑走させ、あるいは滑走を制動しつつ運材する。木馬道は幅員1.2~1.8メートル程度で、路面や桟道の敷設が容易なため、日本の民有林では2キロメートルくらいまでの短・中距離運材に広く用いられた。現在は、集材機やトラクター、林内作業車、多工程同時処理機械などの林業機械の普及と、労働安全上の見地からほとんど用いられなくなったが、小規模民有林の比較的少量・短距離の運材にはいまなお残存している。

[山脇三平]

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百科事典マイペディア 「木馬」の意味・わかりやすい解説

木馬【きんま】

〈きうま〉とも。雪のない地方の山で使われる木材搬出用のそり。カシ等の硬材で作り,積載量4〜10石(1石は約0.28m3)。盤木を敷き並べた10%前後の勾配をもつ木馬道を1〜2人の木馬夫が牽引(けんいん)と制動の操作を加えながら滑走させる。日本特有のもので,古墳時代にすでに使用が確認されている。その操作には高度の熟練と体力を要する。現在はほとんど用いられない。
→関連項目そり(橇)

木馬【きうま】

木馬(きんま)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木馬」の意味・わかりやすい解説

木馬
もくば

遊戯器具の一つ。古くは木製であったためこの名があるが,合成樹脂製のものもある。日本では江戸時代,武士の家庭で子供に乗馬の訓練を兼ねて遊ばせる馬形をした厚板の道具があったが,明治に入ってから足の先に車をつけて木馬として売られるようになった。ヨーロッパでは 19世紀初頭,脚部に弓形の枠などをつけて前後に揺するものがあり,のちに日本にも入ってきた。動かないもの,揺り動かすもの,車付きのものなどのほか,遊園地などに電動式の回転木馬 (メリーゴーランド) が普及している。

木馬
きうま

「きんま」ともいう。山林から伐採した木材を運び出すのに用いるそりの一種。丸太を木材の進行方向に直角に敷き並べた木馬道の上を木材を積んで滑らせるもので,かしやまきなどの堅い木材で造る。

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デジタル大辞泉プラス 「木馬」の解説

木馬

テレビアニメ「機動戦士ガンダム」に登場する宇宙戦艦。地球連邦軍の強襲揚陸艦「ホワイトベース」の別称。ジオン公国軍によるコードネーム。

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世界大百科事典(旧版)内の木馬の言及

【木馬】より

…用途は主に木材の搬出で,そのため大型のものが多く,長さ2~3mに達するものもまれではない。木馬は,必ずキンマミチ,キウマミチなどと呼ばれる専用通路を通すが,ここには鉄道の枕木のように丸太が並べられている。運搬するときは,荷物を積んだ木馬の先端に人が1人立ち,速度や方向などを調節しながら操ってゆく。…

【橇】より

…その他,形状・使用目的によって〈箱橇(はこぞり)〉〈駕籠橇(かごぞり)〉〈腰掛橇(こしかけぞり)〉〈馬橇(ばぞり)〉など種類は多い。泥土上あるいは〈きんま道〉とよぶ傾斜道に使う〈土橇(どぞり)〉〈木馬(きんま)〉と称する一種の橇もある。もっぱら木材,石材などの重量物の運搬に使われるもので,人力あるいは牛馬に引かせるものである。…

【ウマ(馬)】より


[信仰と習俗]
 馬が神聖なものに使用されるという観念から,神霊の乗物としての面が古くからあったことは,日本におけるこの動物に対する考えの一面として注意する必要がある。このため神社に生馬を奉納して飼養し,またその代用に木馬を神前に納め,祭儀に馬をひいて奉仕するといった習俗が広く認められる。生馬や木馬を奉納できぬ階層が板絵を額として納めたのが絵馬の起源であるとの説もある。…

※「木馬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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