改訂新版 世界大百科事典 「アドラールデジフォラス」の意味・わかりやすい解説
アドラール・デジフォラス
Adrar des Iforas
サハラ砂漠の南部,マリ共和国北東部にある山地で,多くの岩面刻画で知られる。刻画は磨崖でなく,単独の岩石の表面に見られ,その主題は,象,カバ,戦車をひく馬,ラクダ,人物などで,古代サハラ文字,古代ティフィナグ文字も刻まれる。象やカバの刻画は最も古く,一帯がまだ湿潤であった数千年前にさかのぼると推定され,12世紀以後まで制作された。おもな遺跡はアルリArli,イブデケネIbdekene,ラトラトRatrat,イジュンハンIdjounhan,イン・フリットIn Frit,タロホスTalohos,イン・タデイニIn Tadeïni,エス・スクEs Soukなど。スーダン・ベルベル(トゥアレグ族)の主都タデメッカの廃虚がタロホスとイン・タデイニに,ソンガイ帝国の都市遺跡がエス・スクにある。現在は少数のトゥアレグ族がラクダや牛を飼って住んでおり,行政の中心はキダルKidal。最近ウラニウム鉱が発見され,日本が採鉱に協力している。
執筆者:木村 重信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報