日本大百科全書(ニッポニカ) 「アナサンゴモドキ」の意味・わかりやすい解説
アナサンゴモドキ
あなさんごもどき / 擬孔珊瑚
stinging coral
腔腸(こうちょう)動物門ヒドロ虫綱アナサンゴモドキ目に属する海産動物の総称、およびその1種。暖海のサンゴ礁浅海域に普通にみられる類で、群体の形から多孔石あるいは属名からミレポラともよばれる。アナサンゴモドキ目にはミレポラMilleporaただ1属が含まれ、代表種はアナサンゴモドキM. alcicornisであるが、本種はパラオ諸島以南に分布し、日本近海には生息しない。この類は石灰質を分泌し、群体は大きな硬い骨格をつくり、イシサンゴ類の骨格に類似する。骨格表面には大小2種類の穴があり、大きい穴には営養個員、小さい穴には指状個員が納まる。営養個員は口と触手をもち餌(えさ)をとる役割をし、指状個員は口をもたずもっぱら防護の役割をする。体表の小さな丸い小室内に生殖体が発達し、それが小さなクラゲとなって遊離する。クラゲは数時間内に卵あるいは精子を放出して死亡する。近縁のイタアナサンゴモドキM. platyphylla、ヤツデアナサンゴモドキM. teneraなどが奄美(あまみ)諸島以南や小笠原(おがさわら)諸島から知られている。多くは黄褐色をしているがこれに触れると触手の刺胞に刺され痛みを感ずる。別群のサンゴモドキ類とあわせてヒドロサンゴ類とよぶこともある。
[内田紘臣]