ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アナト」の意味・わかりやすい解説
アナト
Anat
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【家畜化】
原牛の生息地はヨーロッパ,北アフリカ,エジプト,パレスティナ,メソポタミア,イラン,そしてヒマラヤ以北の温帯域に及んでいた。ただ考古学的遺物の骨格データから見て,確実に家畜化されたもっとも古い牛の証拠は,トルコ,アナトリア高原のステップ帯の前6千年紀前半の遺跡に見いだせる。家畜化の起源地の確定はまず不可能であるが,それはヤギ,羊とともに,西アジアの肥沃な三日月地帯周辺の丘陵地帯で起こったと考えられ,麦の栽培化が行われた地域にほぼ合致する。…
…それは文字どおりの死闘である。そうした運命を背負ったバアルのために,身命を賭して献身する妹神アナトAnatがいる。アナトは勝利の女神であり,バアル神話全体の中で決定的な役割を演じている。…
…ウガリト神話では戦士としてのバアルの活躍が目覚しく,混沌の象徴ヤムの脅しに屈しようとする老いて力の衰えた最高神エールを尻目に,ひとり立ち向かってこれを征服する。バアルはまたタンムズ(ドゥムジ)やアドニスと同じく,雨季によみがえる植物生命の人格化であり,神話では乾季には死んで陰府の象徴モトに降り,姉妹かつ配偶神アナトAnatに助け出される。バアルと配偶神アスタルテそのほかの女神との性的交渉が豊穣を保証するという観念は,農民にはもっとも親しまれ,神々の聖婚はカナン人男女によって聖所で模倣された。…
…古代オリエント,ならびに地中海世界の人々の心を魅了した〈聖なる花嫁〉,豊饒の女神とは,どのような神々であったのか。これについては,北シリアのラス・シャムラ(ウガリト)で発掘された粘土板に刻まれたバアル神話の女神アナトAnatをはじめ,エジプトのオシリス崇拝における女神イシス,ギリシアやフェニキアのビュブロスのアドニス信仰にみられる女神アフロディテなど,いずれも男神=花婿の死を嘆き悲しみ,死者の国から花婿を連れ戻すために闘う戦勝の女神として知られている。 M.エリアーデの《大地・農耕・女性》によると,古代地中海世界に広くみられるこうした女神崇拝は,古代社会における農耕儀礼に,その起源をさかのぼることができるという。…
※「アナト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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