バール(読み)ばーる(英語表記)Hermann Bahr

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バール」の意味・わかりやすい解説

バール(圧力の単位)
ばーる
bar

圧力の単位の一つ。国際単位系(SI)においては「その他の非SI単位」の一つとされている。1平方メートルにつき10万ニュートン(N/m2)の圧力をいう。記号はbarまたはb。気象関係ではミリバールmbを用いた(現在、気象関係はヘクトパスカルhPaを採用しているが、ミリバールとヘクトパスカルが数値的に同じであったために、円滑に移行された)。最初は、1平方センチメートル当り1メガダイン(Mdyn/cm2)と定義された。水銀柱750.062ミリメートル(mmHg)、または1.02キログラム毎平方センチメートル(kgf/cm2)にあたる。名称は、力や圧力を意味するギリシア語に由来する。音響学では1平方センチメートル当り1ダインの圧力を1バールとしていたが、現在はこれをミクロバールmicrobarとよんでいる。

[小泉袈裟勝・今井秀孝]


バール(Jean Wahl)
ばーる
Jean Wahl
(1888―1974)

フランスの哲学者。マルセイユに生まれる。第二次世界大戦中ドイツ軍によって逮捕、投獄されたが、脱出してアメリカへ渡る。終戦とともに帰国、パリ大学教授に復職。1930年代からキルケゴールをはじめとする実存哲学者の思想に関する研究書を多く著しているが、サルトルなどの実存主義者とは一線を画した。たとえば『形而上(けいじじょう)学的経験』(1965)のような「経験」についての現象学的記述を試みた研究書や、大著『形而上学概論』(1953)を著している。また詩集も出しており、詩人哲学者とよばれるべき風格をも備えていた。

[西村嘉彦 2015年6月17日]

『松浪信三郎・高橋允昭訳『実存主義入門』(1962・理想社)』『久重忠夫訳『形而上学的経験』(1977・理想社)』『岡田松夫著『ジャン・ヴァール』(澤瀉久敬編『現代フランス哲学』所収・1968・雄渾社)』


バール(Hermann Bahr)
ばーる
Hermann Bahr
(1863―1934)

オーストリアの作家。リンツに生まれる。時代の動向を敏感に把握してウィーンの文壇をリードした。数多い作品のなかで、戯曲『コンサート』(1909)が知られているが、ジャーナリスト批評家としての業績のほうが重要。若いホフマンスタールの才能をいち早く見抜き、シュティフター再評価の先駆けとなった。ドイツ文学に対してオーストリア文学の独自性を問題として提起した。

[藤村 宏]


バール(無効電力の単位)
ばーる
var

無効電力の単位。回路に1ボルトの正弦波交流電圧を加えたとき、その正弦波交流電圧と位相が90度異なる1アンペアの正弦波交流電流が流れる場合の無効電力をいう。記号はvar。名称はvolt, ampere, reactive powerの頭文字をつないだもの。

[小泉袈裟勝]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バール」の意味・わかりやすい解説

バール
Bahr, Egon Karl-Heinz

[生]1922.3.18. トレフフルト
[没]2015.8.20. ベルリン
ドイツの官僚,政治家。1942年空軍に入隊したが,母方の祖母がユダヤ人だったため強制除隊となり,兵器工場に送られた。第2次世界大戦後,ドイツ連邦共和国(西ドイツ)の西ベルリンや首都ボンでジャーナリストとして働いた。1945~49年『アルゲマイネ・ツァイトゥンク』紙などの記者。1953~54年ベルリン・リアス放送局のディレクターも務めた。1960~66年西ベルリン市広報局長を務め,市の報道官として市長のウィリー・ブラントの信任を得た。1966年にブラントが外務大臣に就任すると外務省特命大使,企画局局長に就任。1969年にブラントが首相に就任すると,副首相ないし閣僚級のアドバイザーの立場で首相を補佐,ドイツ民主共和国東ドイツ)やソビエト連邦との関係を改善し,最終的に東西ドイツの再統一を目指して尽力した。ブラントの東方政策の進展に不可欠の人物だった(→ドイツ統一問題)。1974~76年ヘルムート・シュミット首相のもとで経済協力大臣を務め,東西ドイツが統一された 1990年に連邦議会(下院)議員を退いた。1984~94年ハンブルク大学の平和・安全保障研究所の所長を務めた。

バール
Barre, Raymond

[生]1924.4.12. フランス領レユニオン,サンドニ
[没]2007.8.25. パリ
フランスの政治家,経済学者。パリ大学,パリ政治学院を卒業。のちにパリ政治学院教授。 1959年ドゴール政権の顧問。 1967~72年ヨーロッパ共同体 EC委員会副委員長として EC単一通貨計画のバール・プランを発表,1979年のヨーロッパ通貨制度 EMS発足に貢献した (→ヨーロッパ通貨統合 ) 。その後フランス銀行理事。 1976年1月貿易大臣,8月バレリー・ジスカールデスタン大統領にジャック・シラク首相の後任として首相兼経済・財政大臣に任命された。 1978年下院議員となり,1981年まで首相を務めた。在任中は,緊縮財政やインフレ抑制に取り組んだ。 1988年の大統領選挙に出馬したが,フランソア・ミッテランに敗れた。 1995~2001年リヨン市長。著書に『政治経済学』 Économie politique (1956) など多数。レジオン・ドヌール勲章受章。

バール
Bahr, Hermann

[生]1863.7.19. リンツ
[没]1934.1.15. ミュンヘン
オーストリアの批評家,劇作家。自然主義,印象主義,新ロマン主義,表現主義とめまぐるしく変転する 20世紀初頭の文芸思潮をいちはやく吸収し,常に理論的指導者として,同時代の作家に大きな影響を及ぼした。自然主義時代には A.ホルツらと協力して雑誌『自由舞台』 Die Freie Bühneを刊行,やがて『自然主義の克服』 Die Überwindung des Naturalismus (1891) を発表して,ホーフマンスタールらの「若きウィーン」派を指導し,続いて『表現主義』 Expressionismus (1916) を著わした。喜劇『演奏会』 Das Konzert (09) などがある。

バール
Wahl, Jean

[生]1888.5.25. パリ
[没]1974.6.18. マルセイユ
フランスの哲学者。エコール・ノルマル・シュペリュール (高等師範学校) ,パリ大学に学び,1937年以後パリ大学教授。 41年ナチス占領軍に投獄されたが,同年末に脱出し,42年渡米,シカゴ大学などで講義。 45年パリ大学に復帰。帰国後パリにコレージュ・フィロゾフィクを創立。人間精神に否定性を契機とする弁証法的運動を認め,実在へと超越する形而上学的体験を論じた。主著『キルケゴール研究』 Etudes kierkegaardiennes (1938) ,『形而上学概論』 Traité de métaphysique (53) ,『実存主義入門』 Les philosophies de l'existence (54) 。

バール
Baal

セム民族の男神。セム語で「主」とか「所有者」を意味する。フェニキア神話では,パレスチナ南部のネゲブの地から地中海沿岸にフェニキア人が移住したときに初めて現れる。フェニキアのラス・シャムラ文書では,大気と雲と嵐の神であるハダドとして描かれている。太陽の主神エルに次ぐ偉大な神で,エルよりも新しい。甲冑に身を固め,稲妻を表わす槍を地に突立てて雌牛に乗る姿で表現される。古王国エジプトでも外来の神として崇拝され,旧約聖書では土地所有者とみなされる神々の総称としてバールの名が用いられている。そこでは豊穣神として崇拝されたが,バール信仰は次第にヤハウェ信仰を乱すにいたったため,前8世紀の預信者らにより偶像崇拝であるとして排撃された。

バール
bar

圧力の単位。記号は bar。1barは 1m2につき 105Nの圧力で,ほぼ 1気圧に等しい。1bar=105N/m2=105Pa=0.986923気圧。気象学では気圧の単位としてミリバールがよく使われていた。今日ではヘクトパスカル hPaが使われている。単位名はギリシア語のバロス (重さ) に由来する。

バール
var

無効電力の MKSA単位。記号は var。 1varは電気回路に実効値 1Vの正弦波電圧を加え,これと位相が 90度ずれ,実効値が 1Aの正弦波電流が流れるときの無効電力である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

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