日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブバエ」の意味・わかりやすい解説
アブバエ
あぶばえ / 虻蠅
syrphian
sweat flies
flower flies
昆虫綱双翅(そうし)目ハエ群アブバエ科Syrphidaeの総称。大きい科で21亜科に分かれる。この科は、成虫のほとんどが訪花性であることから従来ハナアブ科、または成虫の腹部が上下に扁平(へんぺい)なことからヒラタアブ科などとよばれていた。しかし、アブ群ではなくハエ群であるのでハナバエ科としたいが、ハナバエ科の名称はすでに別群に先取されているので使用できない。したがって、アブのようなハエの意味でアブバエと改称した。
この科の仲間は、小形から大形まで、体の細長いものから太いものまで、体表が平滑なものから軟毛の密生したものまで、さまざまな形態をしている。複眼は雄では合眼的、雌では離眼的である。前額(ぜんがく)には高等なハエにみられる前額線を欠き、顔面は隆起している。はねの肘脈(ちゅうみゃく)は長く、翅縁近くに達する。径脈と中脈の間には、擬脈とよばれる顕著なしわが走っているのが特徴的である。第5径室は翅縁近くまで中脈によって閉鎖されている。
成虫の訪花性は花粉の媒介に役だっている。幼虫はすこぶる変化に富み、生活様式も異なっていて、形態上、次の四つに分けられる。
(1)無尾型 体はやや扁平な筍(たけのこ)形で、呼吸は双気門式で、後部の気門はほとんど突出しない。アブラムシやカイガラムシを捕食。ヒラタアブバエ、マメヒラタアブバエ、コシボソアブバエ、ホシツヤアブバエなどの幼虫が含まれる。
(2)短尾型 体は円筒状で太く、呼吸は双気門式で、後気門は短い角(つの)状突起の末端にある。腐食性。クロナガアブバエ、モモブトアブバエ、ハチモドキアブバエ、ハラブトアブバエなどの幼虫が含まれる。
(3)長尾型 体は円筒状で、呼吸は後気門式で、後端には体長の1~3倍の長さの細い呼吸管があるので、オナガウジとよばれる。汚水中で生活。ハナアブバエ、シマアブバエ、ルリアブバエ、ホシメアブバエなどの幼虫が含まれる。
(4)ヨメガカサ(嫁が笠)型 体は楕円(だえん)形で、背面は半球状に隆起し、腹面は扁平。皮膚は硬くて網目状の細かい彫刻があり、環節は不明瞭(ふめいりょう)。呼吸は後気門式である。アリの巣内に寄食する。キンアリスアブバエ、フタオビアリスアブバエ、ヒメルリイロアリスアブバエなどの幼虫が含まれる。
[伊藤修四郎]