日本大百科全書(ニッポニカ) 「アメリカン・シーン絵画」の意味・わかりやすい解説
アメリカン・シーン絵画
あめりかんしーんかいが
American scene painting
広義にはアメリカの風景を描いた絵画のことで、1820年代に始まるハドソン・リバー派からウィンスロー・ホーマーやジ・エイトを経て1970年代のフォト・リアリズムまでを網羅する。狭義には20世紀初頭から1940年代前半までの都市や田園風景をよぶ場合と、中西部で1930年代に繰り広げられたリージョナリズムに限る場合とがある。しかし一般にはリージョナリズムを含めて1920年代から1930年代までの都市あるいは田園風景をさすことが多い。写実絵画はアメリカ絵画史を通してつねに主軸を形成しているが、1913年のアーモリー・ショー以降台頭した反モダニズムとナショナリズムの混合のうえに、社会意識が加味されて現れたアメリカ自身の自画像とみることもできる。また抽象系の画家もその潮流に巻き込まれている。経済大恐慌から第二次世界大戦にかけて展開された連邦美術計画の時代には、アメリカ絵画が自国の文化風土を積極的に描いたことで特記される。
[桑原住雄]