日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハドソン・リバー派」の意味・わかりやすい解説
ハドソン・リバー派
はどそんりばーは
Hudson River School
ニューヨークから北上するハドソン川を中心として、その周辺の風景を描いた19世紀アメリカの風景画家群。始祖はトマス・コールで、1825年ごろからキャッツキル山脈やホワイト山脈など人跡未踏の壮大な景観を描いている。エマソンの超越主義に共鳴する詩人ブライアントとの交遊によって、コールは崇高な自然を精細にとらえようと努めたが、高貴な自然の姿を忠実に描けば描くほど絵も高貴になるという考え方が背景にあった。友人A・B・デュランド、J・F・ケンゼットや弟子のF・E・チャーチなどがコールの後を継いだが、コールの文学性と寓意(ぐうい)性はしだいに消滅し、自然主義的な描写へと変わっていった。それと同時に舞台も拡大され、チャーチは南米から北極近くまでも足を伸ばして大自然の驚異をとらえた。クロプシー、ギフォードなども同派の画家として知られている。西部開拓の波に同調した美術現象といえるが、1880年代にはその歴史的役割を終えた。
[桑原住雄]