日本大百科全書(ニッポニカ) 「リージョナリズム」の意味・わかりやすい解説
リージョナリズム
りーじょなりずむ
regionalism
地方主義。この語が最初に使われたのは、1872年のフランスの一詩人の作品であるといわれ、1890年代からフランスで一般に用いられた。その後、各国でも使われるようになったが、各国の特殊事情により、その意味や内容は異なっている。この語の母国ともいうべきフランスでは、パリ中心主義に反対して、伝統あるプロバンス(農村地帯)への郷愁、地方的文化の助成の主張として使われ始めた。ドイツでは、規模の大きいプロイセンを分割し、他の国と均等な形で連邦国家を構成しようとするためのものであった。アメリカでは、TVAのように、数州にまたがる大規模な総合開発などを推進する単位として主張された。イギリスでは、地方自治体の区域再編成という観点から取り上げられ、1965年には経済計画のための広域単位が設けられた。このような相違はあるが、現代の社会経済的諸条件の変化に対応するため、既存の地方行政単位よりも広域な単位が要請されるようになったことから、これが主張されている点では、いずれの国においても似通っている。しかし、実際にはリージョンの範囲の決定が容易でないことや、その単位を地方自治体とするか、国の地方行政区画とするかが大きな問題となっている。
日本では、1970年代の中ごろ以降における「地域主義」の考え方のように、大都市中心、国家中心の政治・経済・文化に対して、地域の自立的な再建方向や構想にリージョナリズムの訳語をあてる場合もあるが、1940年代以降、主として道州制という形で府県制度を再編成する方向として主張されてきた。第二次世界大戦後では、1957年(昭和32)に地方制度調査会が知事公選制の廃止をねらった「地方」制案を答申、70年に日本商工会議所が経済開発を推進する観点にたって地方自治体型の道州制構想を発表し、その後も繰り返しその実現を主張している。
[高木鉦作]