改訂新版 世界大百科事典 「アリス物語」の意味・わかりやすい解説
アリス物語 (アリスものがたり)
イギリスのルイス・キャロルが書いた《不思議の国のアリスAlice's Adventures in Wonderland》(1865)と《鏡の国のアリスThrough the Looking-Glass》(1871)の2編の童話。前者では,白ウサギのあとを追ってウサギ穴に落ちた少女アリスが,地下の国で,身長の伸び縮みや,涙の池や,気違いティー・パーティなど,多くの冒険を味わい,気違い帽子屋やチェシャー猫など,かずかずの人物・動物に会う。最後に,ジャックを裁く不条理な裁判に抗議の叫びをあげたところで,アリスは夢からさめる。他方,鏡をくぐり抜けたあべこべ世界では,アリスはハンプティ・ダンプティなどの変人たちにめんくらいつつ,チェスのポーンからクイーンへと成長してゆく。これも夢物語の形をとっている。教訓臭のない独創的ファンタジーとして世界中の子どもに愛読されている傑作童話であるが,また論理と言語,夢と現実などの問題を豊富にはらんだ作品として,シュルレアリストをはじめ,現代のおとなたちの注目も浴びている。
→不思議の国のアリス症候群
執筆者:高橋 康也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報