日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルイス・キャロル」の意味・わかりやすい解説
ルイス・キャロル
るいすきゃろる
Lewis Carroll
(1832―1898)
イギリスの幻想童話作家。本名のCharles Lutwidge Dodgsonよりも、このペンネームによって知られる。チェシャー州の牧師の息子に生まれ、姉妹7人、弟3人の大家族のなかで少年期を過ごし、初等教育も父親から受けた。のち名門ラグビー校を経てオックスフォード大学に進学、クライスト・チャーチ学寮に入り、学士号取得後も数学および論理学の講師として、終生この学寮にとどまった。ということは、すなわち、妻をめとらず、家を営まず、当時のビクトリア朝の市民社会の一員としてはいささか風変わりな独身生活を貫いたことになる。彼の愛はもっぱら幼い少女たちに向けられたが、そのうちの1人、学寮長の娘アリス・リデルに捧(ささ)げられたのが『ふしぎの国のアリス』で、『鏡の国のアリス』と並び、文学史に不朽の名をとどめている。文学作品としてはほかに長編『シルビーとブルーノ』がある。また写真家としても優れ、当時最新のカメラを駆使して、おびただしい少女たちやテニソン、ロゼッティ兄妹など、同時代の名士たちのおもかげをいまに伝えている。そのほか、本職の数理学を応用したパズルの類も数多い。
[矢川澄子]
『ハドスン著、高山宏訳『ルイス・キャロルの生涯』(1976・東京図書)』▽『E・ハッチ編、高橋康也・迪訳『ルイス・キャロル 少女への手紙』(1978・新書館)』▽『フィッシャー著、高山宏訳『キャロル大魔法館』(1978・河出書房新社)』