日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルカリ形燃料電池」の意味・わかりやすい解説
アルカリ形燃料電池
あるかりがたねんりょうでんち
alkaline fuel cell
濃厚水酸化カリウム水溶液を電解質に用いる低温形燃料電池。アルカリ水溶液中ではニッケルなどの金属が不動態被膜をつくり、耐食性を示すことから、導電性がよい濃厚水酸化カリウム水溶液を電解質に用いるアルカリ形燃料電池が開発された。この燃料電池には、高出力、高効率を得やすいという長所があるが、燃料ガスや空気中の二酸化炭素によって電解質中のOH-イオンがCO32-イオンに変化し、電気抵抗が増大するので、純水素と純酸素を使用しなければならない。そのため経済性を無視できるスペースシャトルなどの特殊用途でのみ実用化された。しかし1985年(昭和60)ごろからは100℃以下で作動する固体高分子形燃料電池の性能が急速に進んできたため、一般用としてのアルカリ形燃料電池の研究開発はほとんど行われていない。
このアルカリ形燃料電池では、ニッケル多孔体に白金などの触媒を添加した電極、およびチタン酸カリウムとポリテトラフルオロエチレン結着して作成した多孔性マトリックスや、アスベスト中に濃厚水酸化カリウム水溶液を含浸させたものを用いて構成されている。この単電池をニッケル製インタコネクタによりスタック化し、数気圧に加圧した純水素と純酸素を供給して常温~120℃で作動されている。
(負極)
H2+2OH-―→2H2O+2e-
(正極)
0.5O2+H2O+2e-―→2OH-
の電極反応が進み、外部回路に電気エネルギーを取り出すことができる。変換効率は45~60%である。
[浅野 満]
『電気学会燃料電池運転性調査専門委員会編『燃料電池発電』(1994・コロナ社)』▽『榊原健樹編著『電気エネルギー基礎』(1996・オーム社)』▽『小久見善八編著『電気化学』(2000・オーム社)』▽『電気化学会編『電気化学便覧』(2000・丸善)』▽『電池便覧編集委員会編『電池便覧』(2001・丸善)』▽『『燃料電池の開発と材料――開発動向と特許展開』(2002・シーエムシー出版)』▽『電気学会燃料電池発電次世代システム技術調査専門委員会編『燃料電池の技術』(2002・オーム社)』