日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルフョーロフ」の意味・わかりやすい解説
アルフョーロフ
あるふょーろふ
Zhores I. Alferov
(1930―2019)
ロシアの物理学者。ソ連白ロシア共和国(現、ベラルーシ)生まれ。レニングラードのウリヤノフ電子技術研究所で学び、1953年からはヨッフェ物理技術研究所でゲルマニウムを使ったトランジスタの作製などについて研究を続ける。1960年代には、「ヘテロ接合」の半導体について研究を開始した。半導体はふつうシリコンでつくられるが、ガリウムとヒ素などのような異種(ヘテロ)の素材を層に重ねたヘテロ接合の半導体をつくると、層と層の間にある電子を高速で動かしたり、良質のレーザーを発振したりできる。1968年ころからアメリカとの間で始まったヘテロ接合半導体開発に向けた競争のなかで、1969年にヘテロ構造の半導体で発振するレーザーの開発に成功。翌1970年には室温で安定に作動する半導体レーザーが開発された。この技術は、現代の情報社会を担う光ファイバーに利用される半導体レーザーなどにも広く応用されている。1970年にヨッフェ物理技術研究所で博士号を取得。1987年に同研究所の所長となる。2000年、「高速エレクトロニクスおよび光エレクトロニクスに用いられる半導体ヘテロ構造の開発」により、ノーベル物理学賞を受賞した。また、独立にヘテロ構造の優れた性質を理論的に予測したH・クレーマー、やはり情報社会の要(かなめ)である集積回路のアイデアを提示したJ・キルビーも同時受賞した。
[馬場錬成]