ガリウム(読み)がりうむ(英語表記)gallium

翻訳|gallium

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガリウム」の意味・わかりやすい解説

ガリウム
がりうむ
gallium

周期表第13族に属する元素。1875年、フランスのボアボードランが分光分析によりピレネー産の閃(せん)亜鉛鉱中に紫色の輝線を示す新元素をみつけ、フランスのラテン名Galliaにちなんで名づけた。ロシアのメンデレーエフが1869年に予言したエカアルミニウムにあたる。分散元素で、天然に単体としては存在せず、希産ではあるが広く分布している。アルミニウム、亜鉛抽出の副産物として得られる。高純度金属は、帯融解法により精製する。軟らかい青みを帯びた白色金属で、融点が低く、液体の温度範囲が広く、固化に際して膨張する。低融点のため塵埃(じんあい)などが付着すると暗色の液体となっていることが多い。アルミニウムに似て金属は酸、水酸化アルカリ水溶液に溶ける。低温では酸化物皮膜により安定であるが、高温では酸素と反応して酸化ガリウム(Ⅲ)を生じる。酸化物は両性酸化アルミニウムより酸性が強い。酸化数Ⅲの化合物が普通であるが、Ⅰの酸化物、ハロゲン化物も知られる。酸化数Ⅱの化合物と思われるものは、たとえばGaCl2はGaIGaIIICl4のようにⅠとⅢの共存する化合物である。金属間化合物とくにヒ素アンチモンリンとの化合物は半導体性質があり、発光素子、ミリ波、マイクロ波の発振素子などのほか、高温での整流器トランジスタ、太陽電池などに用いられ、酸化物はカラーテレビの緑色蛍光体として、金属は液体合金の製造に用いられる。

[守永健一・中原勝儼]



ガリウム(データノート)
がりうむでーたのーと

ガリウム
 元素記号  Ga
 原子番号  31
 原子量   69.72
 融点    29.78℃
 沸点    2400℃
 比重    固体 5.913(測定温度25℃)
       液体 6.1(測定温度30℃)
 結晶系   斜方
 元素存在度 宇宙 45.5(第31位)
          (Si106個当りの原子数)
       地殻 15ppm(第34位)
       海水 (/mgL-1)0.00003

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガリウム」の意味・わかりやすい解説

ガリウム
gallium

元素記号 Ga ,原子番号 31,原子量 69.723。天然には2種の安定同位体であるガリウム 69と 71がある。周期表 13族の元素。 1875年フランスの P.ボアボードランにより発見された。希元素ではあるが,地殻に広くかつ均一の濃度で分布している。単体は銀白色の金属で,融点 29.78℃。化学的性質はアルミニウムに類似する。酸,アルカリと反応して溶解し,水素を発生する。融点が低いので,高温寒暖計に,また低融点合金,半導体材料などとして使用される。

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