光ファイバー(読み)ひかりふぁいばー(英語表記)optical fiber

翻訳|optical fiber

日本大百科全書(ニッポニカ) 「光ファイバー」の意味・わかりやすい解説

光ファイバー
ひかりふぁいばー
optical fiber

光通信に用いられる導波路。「光を導く繊維」という意味であり、光信号が伝搬する中心部のコアとよばれる部分と、その周辺を覆う同心円状のクラッドとよばれる部分の2種類の透明な誘電体(ガラスまたはプラスチック)から構成されている。コアの屈折率をクラッドのそれよりもすこし(0.1~1.0%程度)大きくすることにより、コアとクラッドの境界での光の全反射現象を利用してコア内部に光を閉じ込めて、光信号を遠方に伝える。

坪井 了・三木哲也]

材料による分類

使用される誘電体の材料によって光ファイバーは3種類に分類される。石英主体とした石英光ファイバー、窓ガラスと同様な成分のガラスを用いる多成分ガラス光ファイバー、および透明度の高いプラスチックを用いるプラスチック光ファイバーPOFともよばれる)である。このうち、損失がもっとも低く伝送特性も優れているのは石英光ファイバーであることから、これは光通信用として広く使われている。外径は125マイクロメートルに統一されており、髪の毛ほどの細さである。光を伝えるコアの径は数マイクロメートル~数十マイクロメートルとさらに細い。多成分ガラス光ファイバーは、石英光ファイバーのような低損失を実現できないので、通信用ほど低い損失を必要としない用途に限られる。また、プラスチック光ファイバーは損失が大きいため短距離(数十~数百メートル)の用途に限られるが、大口径化による取り扱いやすさ(接続が容易、曲げがきつくても折れにくいなど)から屋内の装置間の配線や自動車内のワイヤハーネス(配線)などに使用されている。

[坪井 了・三木哲也]

光の伝わり方による分類

光ファイバー内の光の伝わり方により、SM(シングルモード)型とMM(マルチモード)型に大別できる。SM型光ファイバーは、コア径が数マイクロメートルであり、このような細径のコア内においては光信号はただひとつの伝搬モード(光線の伝わり方)しかもたないため、非常に優れた伝送特性を発揮する。MM型は、コア径が数十マイクロメートルの大きいものであり、伝搬モードが非常に多く存在する。そのため、光信号が乱れやすく長距離の通信には適していないが、コア径が大きいのでコネクターなどの部品が安価にできるため、LAN(ラン)などの構内用として使われる。MM型は、コア部の屈折率の形状によってさらに二つに細分される。コア部の屈折率をクラッドの部分に対して階段ステップ)状に大きな値を保つSI(ステップインデックス)型と、クラッドの境界からコアの中心に向けて屈折率を緩やか(グレーデッド)に大きな値へと変化させるGI(グレーデッドインデックス)型である。GI型は、屈折率の変化を放物線状にすることによって伝搬モード間の伝搬速度差を極小化しており、SI型に比べて伝送特性が大きく改善される。そのため、通常使われているMM型光ファイバーはほとんどがGI型である。

[坪井 了・三木哲也]

『榛葉實著『光ファイバ通信概論』(1999・東京電機大学出版局)』『佐藤登監修、電子情報通信学会編・刊『IT時代を支える光ファイバ技術』(2001)』『山下真司著『イラスト・図解光ファイバ通信のしくみがわかる本』(2002・技術評論社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例