半導体レーザー(読み)ハンドウタイレーザー(英語表記)semiconductor laser

デジタル大辞泉 「半導体レーザー」の意味・読み・例文・類語

はんどうたい‐レーザー〔ハンダウタイ‐〕【半導体レーザー】

p型n型半導体の接合部に電流を流して得るレーザー。小形で入力電力に対する出力光の効率がよく、CD・DVD・ブルーレイディスクなどの光ディスクのほか、光ファイバー伝送路とする光通信などに利用。ダイオードレーザー

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「半導体レーザー」の意味・読み・例文・類語

はんどうたい‐レーザーハンダウタイ‥【半導体レーザー】

  1. 〘 名詞 〙 ( レーザーは[英語] laser ) n型・p型半導体の接合部に電流を流して得るレーザー光線。小型で入力電力に対する出力の効率がよい。ビデオディスクコンパクトディスクなどに用いる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「半導体レーザー」の意味・わかりやすい解説

半導体レーザー (はんどうたいレーザー)
semiconductor laser

媒質に半導体を用いたレーザー。半導体結晶中には高いエネルギー状態で自由に動き回れる自由電子と,電子の空席として動き回る正孔がある。電子が正孔に落ち込む再結合といわれる過程では,落ち込む前と後とのエネルギー状態の差分にあたるエネルギーは,母体の結晶に熱として吐き出されるか,または電磁波(光)として放出される。したがって放出光の波長は再結合の前後における電子のエネルギーまたはエネルギー準位の差として与えられる。このような電子の状態の遷移によって生ずる光の放出が放出光自身の影響を受けずに起こる場合を光の自然放出といい,この機構は発光ダイオードの動作原理に用いられている。これに対し,放出光自身が電子の状態遷移を強制的に促す結果発光が強められていく循環過程に入り,光の増幅が生ずる状態を誘導放出といい,レーザー光はこの状態で得られる。したがって,半導体レーザーの動作は電子と正孔が半導体結晶のある領域で同時に高密度に存在することにより自然放出光が強くなることを第1の条件とし,さらにこの条件下で放出した光を次の放出過程に連鎖させる効率を高めて光共振が可能になることを第2の条件としている。半導体レーザーの原型となる構造は次の二つの機能を備えている。第1はp-n接合であり,これにより電子と正孔が発光領域に同時に高密度で注入される。第2は発光領域の両端面が放出光に垂直な光の反射面となることである。これにより,放出光の一部は端面から結晶外へ漏れるが,かなりの割合の光は発光領域に戻って光の共振に利用される。両端面は通常結晶格子の配列する方向に沿ってきわめて平滑に結晶が割れる性質を用い鏡面となっている。またこの結晶端面を含む活性領域はこれをとり囲む領域に比べ光の屈折率が高いため,この中に光がとじ込められやすい領域でもある。レーザー光の発振モードは反射両端面に挟まれた活性領域の長さに関連し離散的に許容される。種々の半導体でレーザー発振が確認されているが,このうちGaAsとGa1-xAlxAsのp-n接合を利用したものがおもなものである。
レーザー
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「半導体レーザー」の意味・わかりやすい解説

半導体レーザー
はんどうたいレーザー
semiconductor laser

半導体を素材とするレーザー総称。半導体の伝導帯に励起された電子が価電子帯の正孔と再結合するとき一般に自然放出 spontaneous emissionによる発光が観測され,これを利用したものが発光ダイオードである。しかしある条件のもとで電子・正孔再結合の誘導放出 induced emissionを自然放出や吸収より強く生じさせることができ,これを利用したものが半導体レーザーである。得られる光の波長は半導体材料によって決り,ほぼ禁制帯の幅に相当する。誘導放出すなわちレーザー発振を生じさせる方法としてはp-n接合に順方向電圧を印加して少数キャリアを注入する方法 (注入型レーザー ) や半導体結晶に直接強い光や電子線を照射して少数キャリアを励起する方法などがある。いずれの場合も結晶の1対の面は特に平行平滑に仕上げられており,内部で発光した光がこの平行な面で反射往復する間に誘導放出現象により発光が強められて増幅され,平行面のつくるキャビティ (空洞) に共振した光のみが選択的に外部に放射される。半導体レーザー,特に注入型レーザーは小型,高能率であり,材料を変えることによって発振波長を選択できるなどの特徴がある。最近ではダブルヘテロ構造注入型レーザーの開発により,常温で連続発振するものが実用化され,将来の光通信用光源の重要なにない手として応用されつつある。一般に気体・液体・固体レーザーに比ベてスペクトル幅や指向性に劣り,出力も小さい。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

化学辞典 第2版 「半導体レーザー」の解説

半導体レーザー
ハンドウタイレーザー
semiconductor laser

半導体を用いてレーザー作用をさせるレーザー.半導体中での正孔と電子の再結合による発光を用いたものである.多くはp-n接合ダイオードに順方向に電圧をかけ,p領域に注入された電子と正孔またはn領域に注入された正孔と電子の再結合による発光を用い,注入型半導体レーザーとよばれている.そのほか,光あるいは電子線により正孔と電子をつくり,その発光を用いるものもある.GaAsを用いた半導体レーザーがよく知られているが,そのほか,InP,InSb,PbTe,PbSeなどを用いるものがある.[別用語参照]青色発光ダイオード

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

知恵蔵 「半導体レーザー」の解説

半導体レーザー

半導体中での光の誘導放出による増幅現象と、端面を反射鏡にして光の正帰還現象とを組み合わせて、コヒーレント光を放出する発光素子。スペクトル幅が極めて狭く、指向性が良いのが特徴。また大きな発光効率が得られる。通常は、ヘテロ接合を2つ組み合わせたダブル・ヘテロ構造が採用される。この構造でより高密度の電子と正孔を動作層内に閉じ込め、レーザー発振を起こしやすくする。CDのピック・アップや光通信の光源に実用化されている。

(荒川泰彦 東京大学教授 / 桜井貴康 東京大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディア 「半導体レーザー」の意味・わかりやすい解説

半導体レーザー【はんどうたいレーザー】

レーザー

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の半導体レーザーの言及

【レーザー】より

…気体の場合には放電励起が一般的である。p‐n接合型の半導体レーザーの場合には接合面を通して電流を流すことでレーザー発振を起こすことができる。気体レーザーの励起の手段としては,このほかに高速の電子線を照射する方法,化学反応を利用する方法,断熱膨張を利用する方法などが試みられている。…

※「半導体レーザー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android