日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルヘリッチ」の意味・わかりやすい解説
アルヘリッチ
あるへりっち
Martha Argerich
(1941― )
アルゼンチンの女流ピアノ奏者。生地ブエノス・アイレスの名教師スカラムッツァVicente Scaramuzza(1885―1968)に学んだのち、ヨーロッパに渡り、グルダ、マガロフ、ミケランジェリに師事。1957年ジュネーブ、1965年ショパンの各国際コンクールに優勝して名をあげた。1970年(昭和45)初来日。女流には珍しく豪放で情熱的な演奏を聴かせるほか、バッハからプロコフィエフまで広いレパートリーをこなす。ロマン派および近代音楽を得意とする。達者な技巧と鋭い感受性に恵まれた、すこぶるスケールの大きいピアニストである。1980年代なかばからリサイタルは開かず、活動をオーケストラとの協奏曲共演、バイオリンまたはチェロとの二重奏、ピアノ二重奏、三重奏および五重奏といった室内楽に限定するようになったが、その人気と評価は依然として高い。日本との結び付きは強く、1998年(平成10)から毎年開かれている「別府アルゲリッチ音楽祭」の総監督を務めている。
[岩井宏之]
『『ONTOMO CD BOOKS アーティスト・シリーズ3 マルタ・アルゲリッチ』(1990・音楽之友社)』▽『青沢唯夫著『名ピアニストの世界』(1991・春秋社)』▽『木之下晃著『音楽家のオフステージ』(1996・東京書籍)』