改訂新版 世界大百科事典 「アルム」の意味・わかりやすい解説
アルム
dragon arum
Indian turnip
Arum
地下に塊茎を有するサトイモ科の属名。多年草で,ヨーロッパから地中海沿岸,インドにかけて10種あまりが分布する。19世紀中ごろまではサトイモ,クワズイモ(アロカシア),テンナンショウ,リュウキュウハンゲなどのサトイモ科の塊茎や多肉質の茎を有する多くの植物がアルム属に所属させられていたが,研究が進むとともにそれぞれ属として独立させられた。葉は通常,単葉でほこ形,早春に展開し,地下の塊茎から群がり生じる。仏焰苞(ぶつえんほう)は筒部と舌状部に分化しており,紫黒色や黄緑色で斑点を有することが多い。仏焰苞につつまれた肉穂花序は基部に雌花,次いで不稔の中性花,雄花がつき,先端部は大きな付属体になっている。栽培や利用されている種にはArum italicum Mill,A.maculatum L.などがある。特異な仏焰苞と花序のため,時に観賞用に栽培されるが,ヨーロッパでは古くから脳溢血(のういつけつ)などの薬として有効と信じられてきた。また塊茎や若葉は食用とされたが,えぐ味を消すのはむずかしい。塊茎から採取されるデンプンはポルトランドアロールートPortland arrowrootの名で利用される。葉や塊茎には約1%のサポニン配糖体を含有する。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報