テンナンショウ(読み)てんなんしょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テンナンショウ」の意味・わかりやすい解説

テンナンショウ
てんなんしょう / 天南星
[学] Arisaema

サトイモ科(APG分類:サトイモ科)テンナンショウ属の総称。多年生の草本で、普通は湿潤森下に生え、まれに草原や岩地にも生育する。茎は短縮して球茎または根茎となり、各節には通常腋芽(えきが)が1個あるが、まれに副芽を生じる。1、2枚の普通葉(一般に葉とよばれる)と数枚の鞘状(しょうじょう)葉がある。普通葉は長い葉柄があり、3裂、または鳥足状か放射状に分裂して網状脈がある。通常は葉柄の下部は円筒状となって花序の柄を囲み、茎のようにみえるので偽茎とよばれる。仏炎包(ぶつえんほう)は下部は筒状に巻いて肉穂花序を囲み、上部は葉状で舷部(げんぶ)とよばれ、通常は前に曲がる。花序は単性または雌雄性で、1年に1個、花茎に頂生する。花は花被片(かひへん)がなく単性で、雌花は1室の子房雄花は合着した雄しべからなり、花序軸の下部に密生する。雌雄性の花序では、下部に雌花群があり、その上に雄花群がある。花序軸の上部は裸出して、付属体とよばれる部分となる。付属体は棒状、または先が細長く伸長して糸状となり、まれに毛髪状に分裂する。基部が急に狭まる場合には、この部分を付属体の柄とよぶ。付属体上に突起状の退化花を生じる種もある。果実液果で赤く熟す。

 本属の植物は栄養状態により花序の性が転換することが知られており、株の成長に伴い、一般にまず雄性の花序をつけ、そののちに、株が成熟すると通常は雌、または種類によって雌雄性の花序をつけるようになる。花序には悪臭があり、送粉は小形のハエなどによって行われる。世界に約150種あり、そのうちの多くは東アジアからヒマラヤ暖帯から温帯に分布する。日本にはウラシマソウマムシグサムサシアブミ、ユキモチソウ、ヒロハテンナンショウなど約50種分布する。

[邑田 仁 2022年1月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テンナンショウ」の意味・わかりやすい解説

テンナンショウ(天南星)
テンナンショウ
Arisaema; Indian turnip

一般にサトイモ科テンナンショウ属の植物の総称として使われる。日本には多数のテンナンショウ類が知られているが,おもなものは,マムシグサ (蝮草)ウラシマソウ (浦島草)ムサシアブミ (武蔵鐙),ヒロハテンナンショウ A. amurensisなどである。この属の特徴は地下に球形の塊根をもち,長い直立した葉柄のある複葉をつける。花はこの葉柄の上部から抜き出すようにしてつき特徴ある仏炎包と,それに包まれた肉穂花序とがあり,その暗い色彩とともに奇異な外形をしている。この類は一般に果実と球茎に有毒成分をもつが,生の球茎をすりおろして肩凝りや,はれものの民間薬とされる。また球茎からデンプンをとり食用とする。八丈島では,自生種のシマテンナンショウ A. negishiiをヘゴンダマと呼び,球茎をゆでてつき,餅のようにして食べる。この属のうち,特にマムシグサを単にテンナンショウと呼ぶこともある。

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