改訂新版 世界大百科事典 「アレタス」の意味・わかりやすい解説
アレタス
Arethas
生没年:860ころ-932以後
ビザンティンの聖職者,古典学者。ギリシアのパトライに生まれ,907年ころカッパドキアのカエサレアの大主教となった。コンスタンティノープルの大主教であり,9世紀ビザンティンにおける古代ギリシア文芸復興に中心的役割を果たしたフォティオスの高弟の一人。アレタスは熱心に古代文人たちの写本を集め,異教・キリスト教の別を問わず,作品注釈を試みた。また彼は名筆家たちに古写本の筆写を委嘱し,その中にはユークリッドの数学書,アレクサンドリアのクレメンスやエウセビオスらのキリスト教護教論,アリステイデスの弁論集,プラトンの対話集などの,現存する最古のビザンティン小文字写本が含まれている。現在オックスフォードのボドリー図書館収蔵のプラトン写本はアレタスの命により能筆家ヨハネスが895年11月に完成したものであるが,これを1801年クラークE.D.Clarkeがパトモスの僧院で発見してイギリスにもたらした。アレタスの碑詩3編は《ギリシア詞華集》の中に含まれている。
執筆者:久保 正彰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報