日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
イギリスにおける労働者階級の状態
いぎりすにおけるろうどうしゃかいきゅうのじょうたい
Die Lage der arbeitenden Klasse in England
エンゲルス著。1845年刊。労働者階級は産業革命以後に現れた新しい階級であり、その先進地はイギリスである。1人の外国人であるエンゲルスがその新しい階級に注目した。彼は公式・非公式の文献の研究だけでなく、労働者の日常生活を観察し、彼らと語り合った。労働者階級の状態は現代の社会運動の土台であるという見地から、彼は労働者の労働条件、生活環境はもとより、教育や生活習慣にまで立ち入って詳細に分析している。ここで描かれている労働者の生活状態は貧しく悲惨なものであるが、若きエンゲルスはまた労働者の組織や運動のなかに、労働者の勇気・知的能力そしてイギリス国民の未来をみている。
[安藤 実]
『『マルクス=エンゲルス全集2 イギリスにおける労働者階級の状態』(1960・大月書店)』