イギリスにおける労働者階級の状態(読み)いぎりすにおけるろうどうしゃかいきゅうのじょうたい(その他表記)Die Lage der arbeitenden Klasse in England

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

イギリスにおける労働者階級の状態
いぎりすにおけるろうどうしゃかいきゅうのじょうたい
Die Lage der arbeitenden Klasse in England

エンゲルス著。1845年刊。労働者階級は産業革命以後に現れた新しい階級であり、その先進地はイギリスである。1人の外国人であるエンゲルスがその新しい階級に注目した。彼は公式・非公式の文献の研究だけでなく、労働者の日常生活を観察し、彼らと語り合った。労働者階級の状態現代の社会運動土台であるという見地から、彼は労働者の労働条件、生活環境はもとより、教育や生活習慣にまで立ち入って詳細に分析している。ここで描かれている労働者の生活状態は貧しく悲惨なものであるが、若きエンゲルスはまた労働者の組織や運動のなかに、労働者の勇気・知的能力そしてイギリス国民の未来をみている。

安藤 実]

『『マルクス=エンゲルス全集2 イギリスにおける労働者階級の状態』(1960・大月書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のイギリスにおける労働者階級の状態の言及

【エンゲルス】より

…こうして得た立脚点から古典派経済学の批判的総括を試みたのが《国民経済学批判大綱》(1844)であって,A.ルーゲとマルクスの編集する《独仏年誌》に発表され,マルクスに大きな衝撃と指針を与え,以後生涯におよぶ両人の協力関係の出発点となった。帰国後に執筆した《イギリスにおける労働者階級の状態》(1845)とともにイギリス滞在の貴重な成果である。帰国後パリとブリュッセルを根拠地とし,草稿《ドイツ・イデオロギー》(1845‐46)の主要部分を書いて唯物史観の確立を主導した後,共産主義者同盟の創立に中心的な役割を果たし,1848年革命を迎える。…

【都市問題】より

…とくにE.ハワード田園都市構想(1902)は,労働者を健康な郊外で美しい花園(住宅)を所有させながら,そこにある工場で働かせるものとして,後世の大都市における衛星都市建設案に影響が大きい。 以上の流れに対し,産業革命,資本主義の展開,都市への富の集中とともに他方の極に不可避的に増大する貧困,労働者生活の崩壊に都市問題の本質をみたのがF.エンゲルスの《イギリスにおける労働者階級の状態》(1845)である。ここで彼は,社会制度そのものが都市労働者の貧困を増大させるのみでなく,その家族生活を破壊し,アルコール中毒や道徳的退廃と絶望を広げるとし,それを当時のイギリスの大都市の現状につき詳しく紹介する。…

※「イギリスにおける労働者階級の状態」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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