組織(読み)ソシキ(英語表記)tissue

翻訳|tissue

デジタル大辞泉 「組織」の意味・読み・例文・類語

そ‐しき【組織】

[名](スル)
組み立てること。組み立てられたもの。
「奥座敷は一種の宿屋見た様な―に出来ている」〈漱石・満韓ところどころ〉
一定の共通目標を達成するために、成員間の役割や機能が分化・統合されている集団。また、それを組み立てること。「組合を組織する」「全国組織
生物体を構成する単位の一で、同一の形態・機能をもつ細胞の集まり。さらに集まって器官を構成する。動物では上皮組織・結合組織・筋肉組織・神経組織、植物では分裂組織・永久組織などに分けられる。
岩石を構成する鉱物の結晶度・大きさ・形・配列などのようす。石理。
織物で、縦糸と横糸とを組み合わせること。織り方。「ラシャは組織が密だ」
[類語](1構成編成編制組成構造機構体制体系組立て仕組みシステム/(2団体結社集団法人組合連盟協会ユニオンソサエティーアソシエーション/(3細胞細胞膜細胞壁細胞質原形質単細胞核酸リボ核酸デオキシリボ核酸遺伝子染色体性染色体ミトコンドリア胚珠胚乳胚芽

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精選版 日本国語大辞典 「組織」の意味・読み・例文・類語

そ‐しき【組織】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) 組み立てること。また、組み立てられたもの。くみたて。そしょく。〔和英語林集成(再版)(1872)〕
    1. [初出の実例]「諸学の見象を類次し単純なる者より組織なる者に至り五学の模範を立つ」(出典:明六雑誌‐二二号(1874)知説四〈西周〉)
    2. [その他の文献]〔孟郊‐出東門詩〕
  3. ( ━する ) 一定の目標があり、成員の地位と役割とそれに応じた責任が決められているような人々の集合体。また、それを組み立てること。広義には一定の機能をもちつつ、全体として結合を保っているものをいう。経済組織、行政組織、社会組織など。そしょく。
    1. [初出の実例]「前年は我々の同志を以て議会を組織(ソシキ)し」(出典:雪中梅(1886)〈末広鉄腸〉下)
  4. 生物体を構成する単位で、ほぼ同じ形や働きをもった細胞の集まり。動物では上皮、結合、筋肉、神経などの各組織に、植物では表皮、通導、柔、機械などの各組織に分けられる。組織が集まって一定の機能をもった器官となる。そしょく。〔医語類聚(1872)〕
  5. ( ━する ) 織物で、緯(よこいと)と経(たていと)を組み合わせること。また、その組み合わせ。そしょく。

そ‐しょく【組織】

  1. 〘 名詞 〙そしき(組織)
    1. [初出の実例]「冬は一里余り隔りたる学校に通ひ夏は紡績組織(ソショク)(〈注〉オリモノ)を事とし」(出典:経済小学家政要旨(仮名付)(1877)〈永峰秀樹訳〉一)
    2. 「大学の組織(ソショク)の如きも、匇卒(さうそつ)今日の有様を見れば、寔(まこと)に羨むべく尊むべく」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一〇)

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改訂新版 世界大百科事典 「組織」の意味・わかりやすい解説

組織 (そしき)
tissue

生物における細胞集団。多細胞生物においては発生が進むにしたがい細胞が形態的・機能的に分化する。これらの細胞は雑然と混合しているのではなく,多くは同じ種類の細胞が集合し,一定の配列をなしている。このように1種類または数種類の細胞からなる有機的細胞集団を組織という。tissueの語はラテン語texere由来のフランス語tissuから派生したもので,織物の意味。あたかも多数の緯糸・経糸からなる織物のように,組織をつくる細胞間には有機的な連絡がある。たとえば,心臓の筋細胞が同調して収縮し,全体として統御された拍動が起こるのも細胞間の連絡があることによる。心臓は心筋,血管,神経などの組織からなる器官であり,それらの組織が一定の秩序をもって結合し,一定の機能を果たしている。

 組織を研究対象とする生物学の分野を組織学という。細胞学がおもに細胞の一般性や細胞内部の問題に注目するのに対し,組織学においては相互に有機的関連をもつ細胞間の結合様式,さらに組織相互の関係が研究される。光学顕微鏡電子顕微鏡を用いる形態学的な方法にかぎらず,生理学的また生物化学的な方法を用いて多角的に研究される。また,個体から取り出した組織片をそのまま調べる従来からの方法だけでなく,近年は組織片や細胞群をガラス器内で培養する組織培養法が発達した。組織培養した細胞により薬物の作用を研究したり,抗体や一定の物質を製造することも盛んに行われている。未分化細胞から特定の形態と機能をもった組織が分化する過程(組織分化または組織発生)の研究にも,組織培養法は有力な手段として利用されている。

動物の組織は形態と機能から,上皮組織,結合組織,軟骨組織,骨組織,血液とリンパ,筋組織(きんそしき),神経組織に分けられる。また,発生学的に上記の結合組織から血液とリンパまでの5組織はすべて間充織(間葉組織)に由来する。これら5組織をまとめて支持組織とよぶこともある。しかし,組織の分類は便宜的なものであり,たとえば,発生学的には神経組織も神経管をつくる上皮に由来し,その意味では上皮組織だが,発生の進行にしたがい複雑になり,上皮の形態学的特徴をまったく失う。

 上皮組織は内胚葉,中胚葉または外胚葉に由来し,体表面,管腔(消化管,呼吸器,泌尿生殖器系の管系など),体腔(腹膜腔,胸膜腔,心膜腔)などの表面を1~数層の細胞ですきまなく覆っている。隣り合う細胞は密着し,細胞間質が介在しないのがふつうである。このような細胞層を上皮という。電子顕微鏡でみると,上皮細胞間の接着は,接着複合体とよぶ異なる一定の構造の組合せからなっている。上皮組織はときに上皮の自由表面から陥入し,分泌細胞群をつくる。このようにして生じた腺組織は上皮の特徴を示している場合が多い。特殊な分化をした上皮もあり,視覚,聴覚,平衡覚にあずかるものや,毛,つめ,水晶体のような特異的な物理学的性質を獲得したものがその例である。上皮の下には一般に結合組織があり,境界に基底膜がある。

 支持組織は細胞間質に富み,細胞がそれに埋もれたように散在する骨,軟骨,結合組織などは,体や器官の形を保つ枠組として働いている。細胞間質は繊維と基質とからなる。発生初期に内・外胚葉のあいだに落ち込んだ細胞から生ずる組織で,まばらな網状につながりあった構造をもつ。血液とリンパを支持組織のなかに加えることがあるのは,血漿(けつしよう)(リンパ漿)を基質,血液凝固時に生ずるフィブリンを繊維とみなすことができるのが理由とされる。結合組織は,皮膚や粘膜の下,神経,血管,腺の周囲などに広く分布している。繊維は,コラーゲン繊維(膠原(こうげん)繊維),細網繊維,弾性繊維からなるが,コラーゲン繊維の量が最も多い。基質はいわゆる酸性ムコ多糖類が主である。軟骨組織は骨とともに骨格系をつくる。張力よりも圧力に対して優れた抵抗力を示し,とくにガラス軟骨は1cm2当り150kgの圧縮力に耐える。軟骨細胞と細胞間質からなり,細胞間質の成分の違いによりガラス軟骨,繊維軟骨,弾性軟骨に分けられる。骨はカルシウム塩を多量に含む細胞間質と,突起でつながり合う骨細胞からなる。硬さは大きいが,曲げに対してはたわむ能力が小さく,折れやすい。皮膚の密性結合組織内に骨組織がつくられる現象を膜内骨化といい(例,頭蓋骨),あらかじめできていた軟骨のモデル上に骨化が進むのを軟骨内骨化(例,脊椎骨)という。

 筋組織は収縮運動を目的として分化した筋細胞からなる。筋細胞は全体として細長い繊維状の外形をとるので,筋繊維とよばれる。筋肉は形態から横紋筋と平滑筋に分けられ,横紋筋は一般に強力で迅速な収縮と緊張を行い,平滑筋はゆるやかな収縮と緊張にあずかる。ほとんどの筋肉は,広い意味での中胚葉(筋板と間充織)由来だが,筋上皮細胞は外胚葉から生ずる。

 神経組織は神経細胞(ニューロン)とグリア細胞神経膠細胞)からなり,生体情報の有線的伝達にあずかる。高等動物では,脳と脊髄を中枢神経系,これらより外に出ているものを末梢神経系という。中枢神経系では神経組織に血管とそれにともなう結合組織が加わっていて,神経細胞体の多く存在する部位を灰白質,神経繊維の多い部位を白質とよぶ。グリア細胞はどちらの部位にも多数存在し,神経細胞の機能を支持する。末梢神経系は神経細胞と,グリア細胞に相当するシュワン細胞および外套(がいとう)細胞が主成分で,血管をともなう結合組織がとりまいている。神経細胞は一生の早い時期に細胞分裂を行い,成体では分裂能力をもたないが,グリア細胞は動物の一生を通じて分裂能力を維持している。
執筆者:

植物のうち藻類にも茎的,根的,葉的な部分をもつものもあるが,これらでは組織とよぶべきまとまりは発達していない。維管束植物の器官はいくつかの組織の集りでつくられているが,組織系の分類については,ザックスJ.von Sachsは表皮系,基本組織系,維管束系を区別し,ファン・ティーゲムP.E.L.van Tieghemは表皮,皮層,中心柱の区分を認めた。これらの形態的分類に対し,ハーバーラントG.Haberlandtは生理的機能に注目して,皮層組織,機械組織,吸収組織,同化組織,通道組織,貯蔵組織,通気組織,分泌組織,運動組織,感覚組織,刺激伝達組織の11の系を識別した。

 植物では,茎頂,根端,形成層など,つねに活発に細胞分裂を行う分裂組織と,すでに分裂能を失った永久組織とがある。永久組織のうちでは,柔組織や厚角組織,厚壁組織(繊維組織を含む)などが典型的なもので,種子植物の葉の柔組織に柵状組織と海綿状組織の分化がみられるなど,形態的にも機能的にも多様な組織の分化がみられる。組織そのものではないが,組織の間にあって重要な形態的単位として細胞間隙かんげき)がある。
執筆者:


組織 (そしき)
organization

組織とは,企業体,学校,労働組合などのように,2人以上の人々が共通の目標達成をめざしながら分化した役割を担い,統一的な意志のもとに継続している協働動行為の体系と定義することができる。すなわち,分化した機能をもつ複数の要素が,一定の原理や秩序のもとに一つの有意義な全体となっているものの意であるから,広義には,動物や植物の場合にもひとつひとつの細胞が集まって成り立つ場合,細胞組織とか人体組織というように用いられる。組織は個人なしには存在しえず,単なる個人の総和以上のものである。組織は個人のパーソナリティに注目しただけでは解明できない固有の現象や特性を示す。

 組織を理解するためには,(1)組織の形成と維持,(2)組織内の行為過程と組織の構造,(3)組織の両義性,という視点がたいせつであろう。以下にこれを詳述すると,(1)人間が組織を形成する基本的な理由は,組織が複数の人々の主体性を結合することをとおして,各人が分散している場合の単純総和以上の拡大された主体性をつくりだすことにある。この拡大された主体性に基づいてより高度の欲求充足が可能になるから,人々は組織に参加するのである。言い換えると,組織は人々に参加への誘因を提供する。組織への参加者を組織の成員という。組織が存続するためには,目標の達成,成員の欲求の充足,成員の貢献の確保,協働のための諸手段の確保といった課題が,社会的環境の課す制約の中で,たえず充足され続けねばならない。これらの条件が充足されないと組織は解体する。(2)これらの条件を継続的に充足するためには,組織内の各成員の意志と行為がたえず調整され整合的に連結され続けねばならない。そのような調整と連結の媒介として,組織には規範と統率者が存在する。統率者を中心にして他の成員との間には放射状のコミュニケーション回路が形成され,それをとおしての指示と報告の授受によって,成員の主体性が連結される。組織の最も単純な形は1人の統率者が若干名の他の成員を統率する単位組織である。複数の単位組織が集まりそれらを統率するさらに上位の統率者が出現すると,複合組織が形成される。このような統率者を何段階も重層化していくと,成員数が数十万人というような巨大組織の形成も可能となる。組織がピラミッド状の構造をとる基本的理由は,このように多数の成員の整合的連結のための統率者の段階化にある。(3)組織は〈協働の体系〉であると同時に〈支配の体系〉でもあるという両義的な性格をもっている。組織が大規模化するほど成員は複数の階層に分化するとともに,階層間の受益格差や意志決定権の格差が広がる傾向があり,さらには階層間の対立も発生しやすくなる。そして統率者が特権的な受益を享受し意志決定権を集中的に掌握するようになると,統率者は支配者という性格をも帯びるようになる。同時に規範も,協働を可能にするための調整手段という性格に加えて,個人に対して拘束や禁欲を課すという両義性をもつものとなる。組織における疎外の問題を考えるにあたっては,〈支配の体系〉という性格への注目がたいせつである。

 組織は,その規模,社会の中で果たしている機能,統率者や規範の決定のされ方,制裁の種類,成員の資格,経済的基盤等のさまざまな観点から多様な類型に分類することが可能である。経営学的関心からは組織の目標達成と成員の欲求充足をいかに高度化するか,そのためにいかにして成員や部局を整合化したらよいかということが,運動論的関心からは労働運動住民運動の中でどのようにして運動を組織化し,要求実現を達成したらよいかということが,疎外論的な関心からは組織が人間にとって抑圧的・拘束的なものになる場合,それはいかなるメカニズムをとおしてなのか,その克服の道は何なのかということが,問われてきたのである。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「組織」の意味・わかりやすい解説

組織(社会学)
そしき
organization

もっとも広義には、ある機能を遂行するように制御されている諸要素の集合である。普通には、人々からなる組織をさしており、特定の目標を達成するために人々の諸活動を調整し統括するシステムのことを意味する。諸活動を調整し統括するには、そこになんらかの指導・管理の主体が存在しなければならない。それは1人の指揮者の場合もあるし、スタッフをもつ管理機関の場合もある。数人の歩行者が道路をふさぐ石を動かすために、1人の指図で全員が力をあわせるとき、そこに小さい一時的な組織が形成されている。また多数の職員をもつ官庁は、職階を通じて管理される恒常的な大組織をもっている。

 指導・管理の主体によって秩序が維持されているような集団は団体とよばれている。この団体が掲げる目標は、その達成のために組織を必要とする。この意味において、組織とは、典型的には団体の組織として、団体の内部に存在するのである。しかし概念の拡張によって、今日ではしばしば組織は「組織された団体」をさし、組織体と別称されることがある。これは、現代の社会で巨大な団体が林立し、複雑な組織が発達していることの反映ともいえる。組織という社会現象は、かつては集団や団体の社会学によって論じられたが、今日では学際的な組織科学の研究対象となっている。

[塩原 勉]

組織の要素と要件

組織理論の基礎をつくったアメリカの経営学者バーナードChester Irving Barnard(1886―1961)によれば、組織が成立するための基本的な要素は、共同目的、コミュニケーション、および協働意欲の三つである。したがって管理主体の職能は、目的を適切に定義して意思決定すること、コミュニケーション体系を維持すること、および積極的な協働意欲を開発することである。組織が成功裏に存続できるかどうかは、二つの要件が等しく充足されるかどうかによる、と彼は考えた。すなわち、〔1〕共同目的が達成されること、〔2〕組織に関与する人々の個人的な目標が達成されること(つまり欲求が満たされること)である。要するに組織目的の達成と参与者欲求の満足とが同時に実現されることこそが、組織の成功の目安である。しかしこれは容易なことではない。それゆえに管理主体の適切な職能の遂行が不可欠になるのである。

[塩原 勉]

組織構造のとらえ方

20世紀初期には、国民皆兵の軍隊や大量生産の工場のような規律ある大組織への関心が強まるにつれ、機械を手本にして組織をつくり、合理性と能率を最大にしようという考え方が出てきた。その典型的なものがM・ウェーバーが指摘した官僚制であった。それは、規則の重視、明確な権限と職階制、業績本位の人員配置、規律と専念、専門知識、文書によるコミュニケーション、公私の厳しい区別を特徴としている。要するに、組織は能率をあげるために機械的に編成されるわけである。しかし、組織は機械のように設計どおりに動くものではない。それどころか組織は変形しながら生存する有機体のようなものと考えられる事実が明らかになってきた。たとえば、組織のなかで成員たちが相互作用を繰り返すうちに自然発生的に非公式な小集団が創発してきて組織行動全体に影響を及ぼすという事実、あるいは、本国の基地にいる空軍部隊の組織構造と前線基地でのそれとが異なるというように、環境が変わると組織構造が変わるという事実、さらには肝心の組織目標そのものが自然に変容してゆくという事実などが知られるようになり、組織は機械ではなく、適応的なシステムであるという考え方が有力になってきた。

 他方、適応的なシステムだとみる考え方に対する批判も出てきた。すなわち、組織には固有の緊張やジレンマが内在していて、それを近似的に解決するための絶えざるくふう改善によって組織は存続しているとする主張がそれである。たとえば、組織の内部で権威の源泉が二つあること、つまり技能に基づく権威と規律に基づく権威が同時に存在することが固有の緊張源になっていること、あるいは秩序と自由の二律背反に根ざすさまざまなジレンマが組織に内在しているということが明らかになった。

[塩原 勉]

近年の組織論

1960年代の前半までに以上のような考え方がみられたが、近年の組織論はそのような論議を踏まえてさらに進展してきた。まずコンティンジェンシーcontingency理論の登場が注目される。この理論の基本命題は「環境特性に適合する構造をもつ組織は、そうでない組織よりも、高い有効性を示す傾向がある」というものである。技術や組織規模といった要因が異なれば、それに対応して有効な組織構造のあり方も異なるということは、すでに知られた事実であったが、さらに環境特性に目が向けられるに至ったわけである。たとえば、次のような発見がある。安定し見通しのきく確実な環境に直面している組織は、官僚制型の構造をとる場合に有効性が高い。逆に不安定で見通しのきかない不確実な環境に直面している組織は、非官僚制型の構造をとる場合に有効性が高い。このような調査結果が示唆するものは、ただ一つの最善の普遍的な構造は存在しないということである。

 このコンティンジェンシー理論に対しては、いくつもの批判がある。第一に、環境への適合を重視しすぎて、組織による環境改変を軽視していること、第二に、環境の変化に対する組織の側の構造の革新がどのように進むのか明らかでないことが指摘される。そこで組織の変化に注意が向けられるに至った。そして組織は混乱や緊張をもともと含むものであって、突然変異として新しい観念や行動様式が絶えず組織内で生じており、それらを選択しつつ採用してゆくところに、組織の創造的進化と自己組織化があると考えられるようになった。ただし、組織進化の型は複数あり、環境特性と関連している。

[塩原 勉]

『C・I・バーナード著、山本安次郎他訳『経営者の役割』(1968・ダイヤモンド社)』『H・A・サイモン他著、土屋守章訳『オーガニゼーションズ』(1977・ダイヤモンド社)』


組織(生物)
そしき
tissue

生物体を構成している形態上の単位の一つ。多細胞生物においては、発生の進行に伴って細胞が形態的、機能的に分化し、一般に同じ種類の細胞が集合して一定の働きを営むように配列している。このような有機的細胞集団を組織という。

[川島誠一郎]

動物の組織

動物の組織は、形態と機能から、上皮組織、結合組織、軟骨組織、骨組織、血液とリンパ、筋組織、神経組織の七つに分けられる。これらのうち、結合組織から血液とリンパまでの四組織は発生学的にすべて間充織(間葉組織ともいう)に由来し、まとめて支持組織、あるいは広義の結合組織とよばれることがある。組織の分類はかならずしも発生学的起源を基準にしたものではなく、たとえば、神経組織は神経管上皮に由来するが、発生の進行に伴って上皮の形態学的特徴を失うので、神経組織として別にされる。

 上皮組織は、体表面、消化器や呼吸器の管腔(かんこう)、腹膜腔や心膜腔の体腔などの表面を、一層から数層の細胞ですきまなく覆っている。隣り合う細胞は密着し、細胞間質がほとんどない。上皮組織はときに陥入し、分泌細胞群(腺(せん)組織)をつくる。視覚、聴覚、平衡覚の感覚上皮や毛、つめのように特殊な性質を獲得した上皮もある。

 支持組織には細胞間質が豊富で、骨、軟骨、結合組織は体や器官の形を保つ枠組みとして働いている。細胞間質は繊維と基質とからなり、細胞はそれに埋もれて散在する。血液とリンパを支持組織のなかに入れるのは、血漿(けっしょう)やリンパ漿を基質、フィブリンを繊維とみなすことができるからである。

 筋組織は収縮運動を営む筋細胞からなる。筋細胞は全体として細長い繊維状の外形をとるので、筋繊維とよばれる。筋は横紋筋と平滑筋に分けられ、横紋筋は一般に強力ですばやい収縮と緊張を行い、平滑筋は緩やかな収縮と緊張にあずかる。

 神経組織は神経細胞(ニューロン)と神経膠(こう)細胞(グリア細胞)からなり、生体情報の有線的伝達を行う。高等動物では、脳と脊髄(せきずい)を中枢神経系、これらより外に出るものを末梢(まっしょう)神経系という。中枢神経系は神経組織に血管と結合組織が加わったものである。神経細胞体の多い部分を灰白(かいはく)質、神経繊維の多い部分を白質とよぶ。グリア細胞はどちらの部位にも多数存在する。末梢神経系も神経細胞と繊維、および繊維を取り巻くシュワン細胞(グリア細胞に相当)が主成分である。神経細胞は、高等動物では一生の早期に細胞分裂を行い、成体では分裂能力をもたない。神経細胞の機能を支持するグリア細胞は、一生を通じて分裂能力を維持している。

[川島誠一郎]

植物の組織

維管束植物における組織は、構成する細胞の種類や形状、細胞壁の性質、起源や発達段階、あるいは細胞や組織の果たす生理作用などによっていろいろに分けられる。

 茎と根の先端にはそれぞれ成長点があり、この部分は活発に分裂を続ける未分化の細胞からなっているため、頂端分裂組織、または、この組織が直接胚(はい)の両端に由来することから一次分裂組織ともいう。このほか、形成層やコルク形成層を側部分裂組織または二次分裂組織という。これらの分裂組織で生じた多数の若い細胞は、やがて成熟して一定の形となり、特定の生理機能を営む各種の組織に分化する。これを永久組織という。永久組織は、成長点すなわち一次分裂組織から直接由来する一次組織と、側部分裂組織に由来する二次組織とに分けられる。

 植物体の成熟した部分の永久組織にはいろいろな組織が含まれているが、そのうち、同一種類の細胞からなる組織を単一組織、2種以上の細胞からなる組織を複合組織という。

 単一組織の主要なものに柔組織がある。柔組織は葉肉、茎や根の皮層や髄、果肉など一次組織の多くを占め、ほぼ等径またはそれに近い多面体で、細胞壁は薄く、原形質を含む生きた組織である。柔組織の生理的な働きはきわめて多様で、葉肉のように細胞内に葉緑体を含有し、もっぱら光合成を営む同化組織、細胞内にデンプンやタンパク質などの貯蔵物質を蓄える貯蔵組織などさまざまに分かれる。柔組織以外の単一組織としては厚角組織や厚壁組織がある。また、二次組織に特有の単一組織にはコルク組織がある。

 複合組織には維管束の木部と篩部(しぶ)がある。たとえば、木部は道管、仮道管、木部繊維、木部柔組織からなる複合組織であり、全体として水分の通道や植物体の支持などの役割を果たしている。

 なお、藻類の一種であるワカメやホンダワラなどの体のつくりはかなり複雑であるし、コケ植物には茎や葉をもつ種類もある。しかし、これらの植物では、外形は複雑にみえても、体を構成している細胞にはそれほど著しい分化はみられないため、シダ植物や種子植物などの維管束植物でいう組織は認められない。

 以上のような多種多様な組織のうち、植物体における存在位置、発生、機能などの面で互いに密接な関係にあるいくつかの組織をまとめて、組織系という高次の構造単位が設定されている。組織系の分け方は植物学者によって異なるが、主要なものとして次の三説をあげることができる。しかし、これらの説にも多少の問題点は含まれている。(1)ザックスの説 ドイツのJ・von・ザックスは、1868年、植物体を表皮系、維管束系、基本組織系の三系に分けた。表皮系は表皮とそれに付属する気孔や各種の毛からなり、維管束系は木部と篩部からなる。また、基本組織系は前二者を除く他の部分である。この分け方は広く行われているが、基本組織系に含まれる組織があまりにも多様である点に批判もある。(2)ファン・ティーゲンの説 フランスのファン・ティーゲンP. E. L. van Tieghemは、1886年、植物体を表皮、皮層、中心柱の三組織系に分けた。中心柱は維管束とその外部の内鞘(ないしょう)、および髄をあわせた部分である。この説は組織の形態、発生、系統などを考慮したものであり、茎や根のような軸状の器官については広く採用されているが、葉のような平面的な器官には適用しにくい。また、種子植物の茎では、皮層と中心柱との境界が明確でない場合が多い。(3)ハーバーラントの説 ドイツのハーバーラントは、1914年、植物生理解剖学の見地から、植物体を組織の営む機能に基づいて次の12系とした。すなわち、分裂組織、皮膚組織、機械組織、吸収組織、同化組織、通道組織、貯蔵組織、通気組織、分泌組織、運動組織、感覚器、刺激伝達組織である。この説は、とくに植物生理学や生態学の面から支持を受けているが、組織系によっては、主要な生理的機能がなんであるかが不明確な場合もあるほか、組織の発生がまったく考慮されていない点などに問題がある。

[相馬研吾]

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普及版 字通 「組織」の読み・字形・画数・意味

【組織】そしよく・そしき

ひもを組み、はたを織る。全体を作りあげる。〔文心雕竜、賦〕麗詞義、符相ひること、組の朱紫を品(わか)ち、畫繪の玄(つ)くるが如し。~此れ賦を立つるの大體なり。

字通「組」の項目を見る

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岩石学辞典 「組織」の解説

組織

岩石の結晶度,粒度,個々の結晶その他の構成物の形,構成物同士の配列状態や接合状態など,鉱物集合体での鉱物の幾何学的な特徴.これは岩石を生じた周囲の条件を反映していると考えられている.組織(texture)と構造(structure)の区別は明確に区分することは難しいが,岩石学では,一般には組織は顕微鏡的な鉱物相互の関係の場合に用い,構造は肉眼的に見られるようなやや大きい模様に用いることが多い.しかしこの区別は学問分野によって異なり,地球科学関係の中でも構造地質学では岩石や岩体が形成されたときに生じる一次構造と,その後の断層,褶曲,節理などを二次構造と区別している.また国によってもtextureとstructueとは日本とは逆の意味で用いられるところがあり,注意を要する.模様(fabric)も区別の難しい語であるが,岩石学ではどちらかといえば組織(texture)に近い意味で用いられることが多い.片山らは岩石の組織は結晶度,粒度,模様(fabric)の三要素で決まるとしている[片山ほか : 1970].

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「組織」の意味・わかりやすい解説

組織
そしき
organization

集団成員間の相互交渉の結果として生れてきた集団全体としての成員相互関係,つまり役割,地位の体系および各成員の行動規準や伝達および統制の過程の総体を意味する。ときには組織化された体系としての集団,つまり組織体のことを組織と表現することがある。しかし一般には,集団の内部の構造化そのものを組織という。集団が自然発生的に生じてくるような場合,その成立の初期には組織分化度は低く,明瞭性を欠き,また各成員の受持つ役割,地位,行動規準は変化しやすく,安定性を欠いているといえるが,集団が長く持続していくに従って,次第に安定し,場合によっては,必要以上に固定化してくる場合もある。集団の組織化は,大別して2つの側面に向って行われる。 D.カートライトによると,その一つは,集団の共通目標に適応する方向に成員の行動を引起す機能であり,他の一つは,集団の統合を維持,強化する方向に働く機能であるとされる。集団の組織はその内部に同時的にインフォーマルな組織とフォーマルな組織をもつ。

組織
そしき
tissue

生物学用語。多細胞の生物体において起源的に同じで形態も似た細胞が,互いに集って一定の作用を営んでいるものをいう。しばしばこれらの細胞は,その生産した物質 (細胞間質など) によって連絡されている。動物には上皮組織,筋組織,神経組織,結合組織などがあり,植物には表皮組織,柔組織,繊維組織,通道組織などがある。動物の血液やリンパなどの体液は,細胞間質が流動性をもっている結合組織として取扱われている。組織は組織系を構成し,また何種かの組織が集って器官を形成する。

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百科事典マイペディア 「組織」の意味・わかりやすい解説

組織【そしき】

生物学用語。多細胞生物において,一定の構造と機能をもった1種または数種の細胞の集りを組織という。動物では上皮・結合・筋肉・神経・軟骨・骨・体液(血液とリンパ液)組織などが区別される。植物では分裂組織・永久組織に大別され,後者はさらに同化・通導・貯蔵組織などに分けられる。何種類かの組織が集まって器官を構成する。

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デジタル大辞泉プラス 「組織」の解説

組織

1973年製作のアメリカ映画。原題《The Outfit》。リチャード・スターク『悪党パーカー/犯罪組織』の映画化。監督:ジョン・フリン、出演:ロバート・デュバル、カレン・ブラックほか。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「組織」の解説

組織

特定の目的を達成するために、専門的な役割を持った部門で構成されている集合体のこと。企業も組織に当たり、ライン部門、スタッフ部門で構成されている。

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栄養・生化学辞典 「組織」の解説

組織

 体の単位の一つで,同一種類の細胞の集団.例えば,上皮組織,脂肪組織など.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の組織の言及

【体制】より

…生物体の構造の基本的,一般的な形式のこと。生物体の構造には,系統分岐とともに生じた千態万様の多様性がある。それらの解析に基づいて生物界はまず菌,植物,動物の3界に分けられる。次にそれぞれの群をやや小さい群(門)に分け,さらにその各群をもっと小さい群(綱,目など)に順次に分けることができる。このようにして生物の種はピラミッド状の体系つまり分類体系に整理される。分類学はこうした解析の作業を中心として成り立っているが,ここで第1に着目されるのが種々の段階にある体制である。…

【経営学】より

…社会への影響力を強めつつある企業の行動を研究対象とする学問分野。資本主義経済のもとでの一般的な企業は,私的営利を目的として経済活動を営む組織体であるが,経営学はその企業行動を組織体の活動として分析するところに,その認識上の特徴がある。経済活動を営む組織体には,直接に営利を目的としていない公企業や公共事業体,協同組合等々もあるが,これらの行う経済活動も,それを組織体の活動として認識したときには経営学の研究対象となりうる。…

【器官】より

…多細胞生物のからだの中で,1種ないし多種の組織から成り,どの個体にも共通する一定の形態・構造と機能をもつ部分のこと。動物体についていえば,例えばヒトの犬歯は象牙質,エナメル質,セメント質,歯髄などいくつかの組織から成る1個の器官である。…

【組織学】より

解剖学の中の一分野。特定の構造と機能をもった細胞どうしが目的に応じて集合し,機能上,構造上の合目的性をもった一つの有機体を形成したものを組織といい,この組織という材質の組合せとして生体を研究する学問が組織学である。これに対して,生体を器官という部品からなりたつ構造として,その微小な構築まで研究していく学問は,顕微解剖学microscopic anatomyとよばれる。…

※「組織」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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