改訂新版 世界大百科事典 「イグナティオスの手紙」の意味・わかりやすい解説
イグナティオスの手紙 (イグナティオスのてがみ)
Epistle of Ignatius
アンティオキアの第2代監督イグナティオスが官憲によって逮捕され,ローマへ護送される途次に記した七つの手紙の総称。まずスミュルナにおいてエペソ(エフェソス),マグネシア,トラレス,ローマの諸教会にあてて,次にトロアスにおいてフィラデルフィアとスミュルナの教会およびスミュルナの監督ポリュカルポスにあてて書かれた。これらに共通している内容は,諸教会の好意に対する感謝,教会の一致団結の勧め,仮現説(地上のイエスの生涯や受難を現実ではなく単なる仮象とする説)とユダヤ教化への警告,シリア教会に使節を派遣することの依頼などである。ローマあての手紙では,信徒たちに彼の助命運動を止めて,キリストの受難にあずかる殉教の死を遂げさせてくれるよう頼む。
執筆者:川村 輝典
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