改訂新版 世界大百科事典 「イザリウオ」の意味・わかりやすい解説
イザリウオ
frogfish
アンコウ目イザリウオ科イザリウオ属Antennariusの海水魚の総称。温帯から熱帯にかけての暖海に広く分布し,水深300mくらいまでの海底にすむ。体はやや側扁して丸みを帯び,うろこはないが,皮膚表面は小さなとげがあるためざらつく。胸びれは腕状に発達し,これと腹びれとで海底をはう。イザリウオ(躄魚)の名もこの習性に由来する。近縁のアンコウ類と同様に,第1背びれの第1棘条(きよくじよう)は変形して吻端(ふんたん)触手となり,これを揺り動かして餌動物を誘引する。イザリウオA.tridensはこの類のもっともふつうな種類で,帯黄色の地に黒褐色の斑紋を散らすが,赤みの強いものなど体色の個体変異が著しい。全長10cm前後。海藻の茂った磯などにすむ場合が多い。体形や習性が変わっているので,水族館ではよく見受けられるが特別な利用価値はない。
執筆者:日比谷 京
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報