原語(ラテン語) temperatus が本来「中庸を得た」という意味のためか、マテオ‐リッチの世界図(一六〇三)では「正帯」と訳され、江戸時代に用いられ、また江戸時代の世界図には「中帯」とするものもあり、明治初期まで使われている。
中緯度にある気候帯で、低緯度の熱帯と高緯度の寒帯との間にある。数理気候帯では回帰線(23度26分)と極圏(66度33分)に挟まれた地帯をさす。ズーパンは温帯を等温線によって定め、熱帯との境界を年平均気温20℃、寒帯との境界を年平均0℃とした。現在もっともよく使われている温帯の定義は、ケッペンによる最寒月の平均気温零下3℃から18℃の地域とする考え方で、最暖月平均気温10℃の等温線と、最寒月平均気温18℃に挟まれた地帯を広義の温帯、そのうち最寒月の平均気温零下3℃以下の地域を冷温帯あるいは亜寒帯とし、その分を除いた地帯を狭義の温帯とする。一般的には狭義の温帯をさす。位置的な温帯の範囲は緯度30度から50度程度にだいたいまたがっているが、水陸分布や大地形の影響で等温線がかならずしも緯線に平行しておらず、とくに大陸の西岸と東岸ではかなり位置がずれる。数理気候帯では温帯は地球上の約25%を占め、そこでは1年を通じて太陽が真上にくることはないが、太陽がまったく地平線上に現れない日もない。ケッペンの区分による温帯の範囲は北半球のほうが海洋の多い南半球よりもかなり大きい。
温帯は偏西風の卓越する地域で、季節の移り変わりが熱帯、亜熱帯、亜寒帯、寒帯より顕著に現れる。寒帯や亜熱帯に比較して一般に降水量が多く、人口密度も高い。これは冬の寒さも、夏の乾燥も極端ではなく、農作物も多く、活動しやすい地域であるからと考えられる。
[小林 望・福岡義隆]
植物生態学上の温帯は、広義には夏緑林帯、針葉樹林帯を含むが、狭義には夏緑林帯に対して用いられることが多い。また日本では、温帯を冷温帯(夏緑林帯)と暖温帯(照葉樹林帯)とに区分することも多く、冷温帯に対して狭義の温帯を、暖温帯に対して暖帯の名をあてることも行われる。狭義の温帯は中緯度地帯の夏緑林帯をさし、北半球ではブナ属、ナラ類、カエデ類、シナノキ類などの森林を本来とする地域である。夏緑林帯のもっともよく発達するのは、北アメリカの東部とユーラシアの両端、すなわち中国から日本にかけての地域とヨーロッパである。その他の地域では、乾燥のためステップまたはステップ林となっている。
[大場達之]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
熱帯,寒帯に対する地域名として,天文学的には回帰線と極圏にはさまれた中緯度地方の総称である。この温帯は全世界の陸地の35%を占め,そこでは太陽が天頂からさすことがなく,また水平線からのぼらない日,あるいは水平線下に没しない日はない。気候的には温帯の低緯度側に亜熱帯,高緯度側に亜寒帯を設けるので,緯度30°~50°あたりを指す。平均的には温和な気候で,四季の区別が明瞭である。ケッペンは最寒月平均気温が18℃以下で,-3℃以上,最暖月平均気温が10℃以上の地域と定義した。林学や植物生態学では,低緯度地方より亜熱帯,暖帯,温帯,亜寒帯と分類し,人によって亜寒帯を温帯に含め温帯北部という。また,上記の暖帯と温帯をまとめて温帯(広義)とし,さらに暖温帯,温帯(狭義),冷温帯と細分することもある。
執筆者:山下 脩二
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