改訂新版 世界大百科事典 「イドリースアローマ」の意味・わかりやすい解説
イドリース・アローマ
Idris Alawma
中部アフリカのチャド湖周辺を支配したカネム・ボルヌー帝国の王。生没年不詳。1570年ごろから17世紀初頭まで活躍,この帝国に最盛期をもたらした王として名高い。即位直後のメッカ巡礼(帝国は11世紀末以来イスラム国)の際に銃と弾薬の威力を知り,トルコ人の軍事教官を連れてきて兵にその扱い方を学ばせた。これを元来あった騎兵隊にもたせて軍事力を飛躍的に強化し,トゥアレグ族を北辺に追いやるなど,国を脅かす勢力を駆逐した。またイスラムを国教とし,住民を強制的に改宗させたが,それは国の一体化に大いに役立った。さらに農耕の進歩に力を注ぎ,穀物の計量単位を制定した。こうして税を集める為政者と税を納める一般の人々との経済的な角逐の原因を除去し,両者の関係を安定させた。そのうえ彼は領土の拡大を望まず,したがって経済・軍事の両面で安定した帝国をつくりあげたのである。
執筆者:井上 兼行
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