日本大百科全書(ニッポニカ) 「イブヌル・ムウタッズ」の意味・わかりやすい解説
イブヌル・ムウタッズ
いぶぬるむうたっず
Ibn al-Mu‘tazz
(861―908)
アラブの詩人。アッバース朝のカリフ、アル・ムウタッズの子息で、バグダードに生まれメッカ(アラビア半島)で育った。カリフ、アル・ムクタフィーの死に及び教王の位についたが、数時間後にアル・ムクタディルの一味に殺害されるという悲劇的最期を遂げた。朝酒を戒め晩酌を勧めた長詩、アル・ムアタディドカリフ時代のできごとを描いた叙事詩的性格の濃いものなどがある。
また『アルバディーア』と題された著書は詩論で、バディーア派の特色を明らかにした最初の書といわれ、バディーア派が古くからアラブのうちに行われていた伝統の所産であることを強調している。
[内記良一]