イベリア・カフカス語族(読み)いべりあかふかすごぞく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イベリア・カフカス語族」の意味・わかりやすい解説

イベリア・カフカス語族
いべりあかふかすごぞく

北カフカス語族、南カフカス語族、それに、この両者から地理的にかなり離れたイベリア半島のピレネー山脈地方に行われているバスク語の三者が、当語族を形成すると主張されることがある。しかしこれら三者の間の親族関係は証明されていない。ちなみに、カフカス地方は、古くギリシア人によってイベリアともよばれ、ヨーロッパのイベリア人が移住した、あるいは、そこからヨーロッパに移住があった、という伝承がある。

 北カフカス語族は北西カフカス語派(単に西カフカス語派、あるいはアブハズ・アディゲイ諸言語とも称される)と北東カフカス語派(単に東カフカス語派、あるいはナク・ダゲスタン諸言語とも称される)に分かれる。北西カフカス語派にはアブハズ語、アディゲイ語、カバルディ語(チェルケス語とも)、アバザ語、ウビフ語が属する。この語派は70~80にも及ぶ子音を有し、他面、母音は1、2しかないという特徴を有する。北東カフカス語派はさらに中部カフカス語群と東部カフカス語群とに分かれる。中部カフカス語群はチェチェン語、イングシュ語、バッツ語などからなる。東部カフカス語群に属するのはアバル語、アンディ語、ディド語、ダルグヮ語、ラック語、レズギ語、タバサラン語などできわめて多い。これらの諸言語のなかには、母音の体系が非常に複雑で、子音の体系が比較的単純なものと、その逆のものとがみられる。

 南カフカス語族はカルトベリ語族ともいわれ、ジョージアグルジア)語、ミングレル語、ラズ語(チャン語とも)、スバン語からなり、なかではスバン語は他の三つから比較的遠い関係にある。また、ミングレル語とラズ語とは、単一の言語(ザン語)の方言とみられることもある。これらの言語、ことにジョージア語には、語頭におびただしい子音連続がしばしばたつ、などの特徴がある。

[田中利光]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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