ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イワン1世」の意味・わかりやすい解説
イワン1世(カリタ)
イワンいっせい[カリタ]
Ivan I Danilovich, Kalita
[没]1340.3.31. モスクワ
ロシアのモスクワ大公(在位 1328~40)。モスクワ公ダニールの息子。カリタとは「金袋,富」の意。1325年,兄ユーリーの死後モスクワ公位を継承。ボルガ川上流とオカ川中流に挟まれたモスクワの水運に課する租税と南東方リャザン公国へ向かうノブゴロド商人からの関税で富を蓄え,その財力を背景に,持ち前の狡智と才幹でタタールの宮廷に巧みに取り入り,キプチャク・ハン国から貢納請負権を獲得。これをもって周辺の諸公を服従させ,上長公権たるウラジーミル大公位をめぐる争いで対抗者トベーリ公を圧倒し,ウラジーミル大公となった。対外的にはタタール政権の経済的圧迫をしだいに除去して独立の準備を行ない,対内的には領内の治安維持,交易の安全をはかったほか,ウラジーミルにあった府主教座を1326年にモスクワに移して市の宗教的権威を高め,従属中小諸公と民衆の統治に活用した。イワン1世による集権化政策の結果,モスクワ大公国の優位は不動のものとなり,以後の統一国家への基礎が固められた。
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