日本大百科全書(ニッポニカ) 「イーシュバラクリシュナ」の意味・わかりやすい解説
イーシュバラクリシュナ
いーしゅばらくりしゅな
Īśvaraka
生没年、伝記は不明。5世紀ごろのインドの哲学者。漢訳名は自在黒(じざいこく)。サーンキヤ学派の基本的教科書『サーンキヤ・カーリカー』(数論偈(すろんげ))の著者。その書は仏教の世親(せしん)(400ころ―480ころ)の時期につくられたともいわれる。彼はそれまで同学派に行われていた説を整理し、精神(霊我)と非精神(原質)との二元および25の原理をもって、世界の生成変化(転変説)と解脱(げだつ)論を要約した。同書はのちに多くの注釈書がつくられ、その一つが、546年に中国に渡来した真諦(しんだい)によって『金七十論(きんしちじゅうろん)』として漢訳された。
[村上真完 2018年5月21日]