改訂新版 世界大百科事典 「金七十論」の意味・わかりやすい解説
金七十論 (きんしちじゅうろん)
古代インド,サーンキヤ学派の根本典籍《サーンキヤ・カーリカー(数論頌)》の古注で,6世紀中ごろ真諦(しんだい)によって漢訳された。著者は不明,サンスクリット原本も発見されていないが,最近テキストが刊行された《スバルナ・ブリッティSuvarṇa vṛtti》は内容的に類似点が多く,本書の原本と推定する学者もある。現存する外道典籍の漢訳としては,本書と《勝宗十句義論》の2書があるのみ。日本では江戸時代後半に盛んに研究され,また20世紀初頭,高楠順次郎のフランス語訳によってヨーロッパに紹介された。なお仏典中には,サーンキヤ学派が仏教徒を論破して《金七十論》なる書物を著し,世親はこれをさらに論破したとの伝説があるが,この書と現存する《金七十論》との関係は必ずしも明らかではない。
執筆者:丸井 浩
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報