真諦(読み)シンダイ

デジタル大辞泉 「真諦」の意味・読み・例文・類語

しんだい【真諦】

《〈梵〉Paramārtha》[499~569]インドの僧。梵語ぼんご経典を持って中国に渡り、りょう末の戦乱各地を転々とした。その間、金光明経摂大乗論・中辺分別論・大乗起信論など多く典籍を漢訳した。

しん‐たい【真諦】

仏語。絶対不変の真理究極の真実。第一義諦勝義諦。⇔俗諦ぞくたい
しんてい(真諦)1」に同じ。
文学の―に触れるもの」〈寅彦科学と文学〉

しん‐てい【真諦】

事物思想の根本にあるもの。本質をとらえた極致。「ルネサンス絵画の真諦」「幽玄の真諦
しんたい(真諦)1

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精選版 日本国語大辞典 「真諦」の意味・読み・例文・類語

しん‐たい【真諦】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 仏語。
    1. (イ) 一般に出世間的な仏教の真理をいい、また仏教の真理に目ざめた人のみが知っている事柄をさす。第一義諦。実相。真如(しんにょ)。⇔俗諦
      1. [初出の実例]「若照真諦実智。照俗諦権智」(出典:法華義疏(7C前)一)
      2. [その他の文献]〔摩訶僧祇律‐三三〕
    2. (ロ) 王法(国法や道徳)に対する仏法の意。
      1. [初出の実例]「仁王・法王互顕而開物、真諦・俗諦逓因而弘教」(出典:末法燈明記(801))
  3. しんてい(真諦)
    1. [初出の実例]「すでに内部生命の観察をもって文学の真諦(シンタイ)であると主張した浪漫主義者透谷でさえも」(出典:心理文学の発展とその帰趨(1930)〈瀬沼茂樹〉浪漫的心理描写)

しん‐てい【真諦】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 真の道理。思想、芸術その他物事の根本義。奥義。
    1. [初出の実例]「じゃうははその年月までかたうをまなびても、いまだしんていにたらざるや」(出典:仮名草子・古活字版竹斎(1621‐23頃)上)
  3. しんたい(真諦)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「真諦」の意味・わかりやすい解説

真諦
しんだい
(499―569)

インド出身の訳経僧。サンスクリット名パラマールタParamārtha。西インド、ウジャインの出身。交州(こうしゅう)(ハノイ)在留中、梁(りょう)の武帝(蕭衍(しょうえん))の招聘(しょうへい)に応じて中国に渡り、広州を経て、548年建康(けんこう)(南京(ナンキン))に到着した。しかし、おりから梁末の動乱で、呉の富春(ふしゅん)、江西(こうせい)の予章(よしょう)、南康(なんこう)、始興(しこう)などに流浪を余儀なくされ、十分な訳場(やくじょう)も用意されずに苦労を重ねた。558年、予章から東海岸の晋安(しんあん)に赴き、ついで南越(なんえつ)を経て西帰しようとしたが機会を得ず、562年出航したものの台風のため広州に再上陸した。さいわい広州刺史(しし)欧陽(おうようぎ)(498―563)父子の保護を得て、ようやく安住し、569年71歳で示寂した。

 この間、およそ50部120巻の翻訳と、経論の釈疏(しゃくしょ)などの著述があると伝えるが、現存するのは『決定蔵論(けつじょうぞうろん)』『大乗起信論(だいじょうきしんろん)』『金光明経(こんこうみょうきょう)』(一部)、『無上依経(むじょうえきょう)』『仏性論(ぶっしょうろん)』『中辺分別論(ちゅうへんふんべつろん)』『宝行王正論(ほうぎょうおうしょうろん)』『摂大乗論釈論(しょうだいじょうろんしゃくろん)』『倶舎論釈論(くしゃろんしゃくろん)』など30部である。真諦はこのうち『摂大乗論』の訳出と講釈を畢生(ひっせい)の任務とし、その弟子たちの間からのちに摂論(しょうろん)宗が生まれた。のちに玄奘(げんじょう)から批判されたとはいえ、無著(むじゃく)・世親(せしん)の唯識(ゆいしき)説の全貌(ぜんぼう)を最初に中国に伝えた点で、彼の功績は大きい。

[高崎直道 2016年11月18日]

『宇井伯寿著『印度哲学研究 第6巻』(1930・岩波書店)』

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改訂新版 世界大百科事典 「真諦」の意味・わかりやすい解説

真諦 (しんだい)
Zhēn dì
生没年:499-569

中国,南朝の梁・陳時代の外来僧。西インドのウッジャイニー国のバラモンの出身で,パラマールタParamārthaといい,漢訳して真諦と称した。梁の武帝の招きに応じ,扶南国から広州をへて548年(太清2)に建康(南京)に着いたが,侯景の乱にあい,各地を転々としながら,経論の漢訳と著述に専念した。無著撰《摂大乗論》などの唯識系統の論を訳し,〈摂論(しようろん)宗〉の祖とされ,またクマーラジーバ(鳩摩羅什)および玄奘(げんじよう)とともに中国仏教史上の三大翻訳家の一人といわれる。なお彼の訳と伝えられる《大乗起信論》は,疑問の書とされるが,中国や日本の仏教界・思想界に大きな影響を与えた。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「真諦」の意味・わかりやすい解説

真諦【しんだい】

インド出身の中国の訳経家。北西インドのウッジャイニー国のバラモンの家に生まれ,本名はパラマールタ。548年2万巻の経典をもって海路より建康(南京)に到着,主として唯識(ゆいしき)関係の論書を翻訳した。時に梁(りょう)末の動乱期に当たり,ほとんど独力で行ったが,その訳文の優秀さは他に比をみないといわれる。訳書《摂(しょう)大乗論》《金光明王経》《倶舎論》など。
→関連項目倶舎論

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「真諦」の意味・わかりやすい解説

真諦
しんだい
Paramārtha

[生]499
[没]太建1(569)
西インドの僧。インド名パラマールタ。中国,梁の武帝に招かれて,中大同1 (546) 年中国に渡る。『金光明経』『大乗起信論』『摂大乗論』『倶舎論釈』など 64部,278巻の経論を訳出している。摂論宗の開祖といわれる。

真諦
しんたい

真俗二諦」のページをご覧ください。

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普及版 字通 「真諦」の読み・字形・画数・意味

【真諦】しんてい

真理。

字通「真」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の真諦の言及

【真俗二諦】より

…中国,南北朝期にとくに三論宗の教義の中心として論議された仏教教理概念で,真諦と俗諦のこと。真諦とは絶対不変の真理,俗諦とは世俗的真理を言う。…

※「真諦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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