ウェルギリウスの死(読み)ウェルギリウスのし(その他表記)Der Tod des Vergil

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウェルギリウスの死」の意味・わかりやすい解説

ウェルギリウスの死
ウェルギリウスのし
Der Tod des Vergil

オーストリア作家 H.ブロッホ小説。 1945年刊。ローマ詩人ウェルギリウスの死の直前の 18時間を内的独白によって綴る思想詩ともいうべき作品で,現代散文の極致と目される。ブロッホはここで,現代と同じ転形期に生きたと考えるこの詩人が大叙事詩『アエネイス』の破棄を遺言したことをとらえて,現実に対する文学の無力をテーマに,価値崩壊の時代である現代を批判している。

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世界大百科事典(旧版)内のウェルギリウスの死の言及

【アエネーイス】より

…彼は草稿の焼却を強く要望したが,アウグストゥスはそれを認めず未完成の部分を含んだまま詩人の友人ウァリウスとトゥッカに刊行を命じた。なお,H.ブロッホの小説《ウェルギリウスの死》(1945)は,死を間近にした詩人ウェルギリウスの内面を鋭く描いた作品である。【三浦 尤三】。…

【ブロッホ】より

…38年ナチスによるオーストリア併合時にゲシュタポに逮捕されたが,ジョイスの尽力で釈放されアメリカに亡命した。この逮捕がきっかけとなってアメリカで書かれた《ウェルギリウスの死》(1945)は,ローマの大詩人の死の直前の18時間をジョイス風の巨大な内的独白で描いている。その後プリンストン大学で講師をつとめながら群衆心理を研究。…

※「ウェルギリウスの死」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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