改訂新版 世界大百科事典 「ウクライナ教会」の意味・わかりやすい解説
ウクライナ教会 (ウクライナきょうかい)
ウクライナの正教会。モスクワ総主教のもとで自治教会を形成する。ロシアにおけるキリスト教文化の中心であったウクライナは,モンゴル軍の侵入とともに荒廃し,キエフ府主教座も14世紀前半にはモスクワに移った。14世紀後半からしだいにポーランドの支配下に入り,カトリック教会が合同工作を行い,ブレスト合同宣言(1595)により合同教会が成立した。この教会は19世紀中葉までに勢力を失った。またガリツィア地方の合同教会は1946年までにほぼ消滅した。ウクライナの正教会はカトリックの攻勢の前に混迷を続けていたが,17世紀前半,キエフ府主教モギラ(モヒラ)Pyotr Mogilaの努力で再興期を迎えた。しかしキエフ府主教座は17世紀末,ロシア帝国のウクライナ併合とともにモスクワ総主教の管轄下に置かれた。ロシア正教会のシノド時代を経て革命後もウクライナ正教会の独立は実現しなかった。しかし,ウクライナ独立への動きのなかで1990年1月,ウクライナ正教会と改称した。これは依然としてモスクワ総主教のもとにあるが,92年春にキエフ府主教がモスクワから離反し,ウクライナ正教会=キエフ総主教区を組織したものの,少数派にとどまっている。さらに,これらとは別に90年春にはウクライナ独立正教会(ロシア革命後,1921年に成立した民族教会で,30年代に弾圧された)が復活している。なお南北アメリカ大陸を中心に多数のウクライナ人が亡命教会を作っている。
執筆者:森安 達也
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