改訂新版 世界大百科事典 「ウチワゴケ」の意味・わかりやすい解説
ウチワゴケ
Gonocormus minutus(Bl.)v.d.B.
山野の岩上,樹幹上か地上にマットをつくるシダ植物。コケシノブ科の小草本。大きさは葉の径1.5cm,植物体の高さ2cmまで。根茎は細く,分枝しながらはうのでマット状のコロニーとなる。葉柄は根茎とよく似た形状で長さ約1cm,翼はない。葉身は掌状に広がり,縁は不規則に切れ込んで,うちわのような形になるのでウチワゴケ(団扇苔)と名づけられた。胞子囊群は葉縁につき,包膜はコップ状で縁がわずかに広がり,胞子囊床が長く伸びる。北海道以南の日本全土にみられる。種の範囲の設定が難しいが,広義にみれば,アフリカからポリネシアへかけての熱帯・亜熱帯に広く分布することになる。ときどき,盆栽などに利用されることがある。
コケシノブ科Hymenophyllaceae
葉面が細胞層1層に単純化しており,気孔をつくらず,コケとよく似た生態をもっている。ウチワゴケも,その名の示すとおり,コケと間違えられることが多いが,維管束をもった胞子体があり,シダであることを疑う余地はない。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報