うっ血乳頭(読み)うっけつにゅうとう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「うっ血乳頭」の意味・わかりやすい解説

うっ血乳頭
うっけつにゅうとう

頭蓋(とうがい)内圧の亢進(こうしん)に伴い受動的に視神経乳頭がむくんでくる眼疾患をいう。視神経眼窩(がんか)内、視神経管内では脳と同様に硬膜、くも膜軟膜の3層に包まれていて、内層のくも膜・軟膜鞘(しょう)の間は、くも膜下腔(くう)として脳とともに絶えず脳脊髄(せきずい)液が循環しているが、脳圧が上昇すると眼球後端の乳頭に近いくも膜下腔先端まで髄液圧が上昇して膨満する。網膜中心静脈は眼球後方8ミリメートルあたりで視神経を離れてくも膜下腔を通過し眼窩内に出るが、頭蓋内圧が脳腫瘍(しゅよう)などで高まると、静脈の還流を圧迫して乳頭に強いうっ血がおこる。検眼鏡で見ると視神経乳頭が浮腫(むくみ)を示し、膨隆して境界が不鮮明となり、周囲の網膜まで浮腫が波及して高まっている。視神経乳頭自体の炎症ともっとも異なる点は、初期にはうっ血が強くても視力障害がないことである。しかし、末期には炎症性萎縮(いしゅく)と同様に汚く褪色(たいしょく)萎縮する。これは循環障害の結果である。うっ血乳頭の場合には、両眼の視力・視野精密検査をはじめ、全身症状のほか、X線によるCT検査などによって原因疾患を明らかにする必要がある。これによって脳腫瘍発見の手掛りとなることが多い。

[井街 譲]

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家庭医学館 「うっ血乳頭」の解説

うっけつにゅうとう【うっ血乳頭 Choked Disc】

[どんな病気か]
 脳圧亢進(のうあつこうしん)(脳の中の圧が高くなる)のため、眼底検査で視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)に強い浮腫(ふしゅ)(むくみ)がみられる状態をいいます。脳腫瘍(のうしゅよう)や脳出血などの頭蓋内疾患(ずがいないしっかん)の診断の重要な所見の1つです。
 両眼にみられ、初めは視力低下はありません。頭痛、吐(は)き気(け)、めまいなどの自覚症状があるため、神経内科や脳外科を受診し、眼底検査で発見されることも少なくありません。
[治療]
 うっ血乳頭が発見されれば、頭部のCTやMRI検査が行なわれ、頭蓋内病変の発見に努めます。脳圧が下がると乳頭の浮腫はとれます。
 浮腫が長く続くと視神経が萎縮(いしゅく)して視力低下をおこし、治らないことがあるので、できるだけ早く頭蓋内疾患の治療を行なって脳圧を下げます。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「うっ血乳頭」の意味・わかりやすい解説

うっ血乳頭
うっけつにゅうとう
papilledema

眼底の視神経乳頭が腫大隆起し,硝子体中にきのこ状に突出した状態。出血や白斑を呈するが,網膜との境界は比較的明らかで,周囲の網膜には著しい浮腫や混濁はない。網膜静脈は怒張蛇行している。初期のうちはマリオット盲点が拡大するだけで,中心視力は比較的良好なことが多いが,長時間持続すると視神経が萎縮する。うっ血乳頭発生の最大の原因は頭蓋内圧亢進であり,通常,うっ血乳頭があれば脳腫瘍を疑うが,反対に脳腫瘍があれば必ずうっ血乳頭がみられるとはかぎらない。

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