日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウージェニー・グランデ」の意味・わかりやすい解説
ウージェニー・グランデ
うーじぇにーぐらんで
Eugénie Grandet
フランスの作家バルザックの長編小説。1833年刊。革命時代に荒稼ぎしたソーミュールの樽(たる)屋グランデ老人の偏執的な吝嗇(りんしょく)ぶりと、そのひとり娘ウージェニーの純愛とが、地方色豊かな緩慢なテンポでくすんだドラマを展開する、バルザック的写実主義の最初の傑作。相続財産をねらって求婚を策動する村の勢力家たちの意に反して、ウージェニーは、破産してパリからきた従兄(いとこ)シャルルに愛情を覚え、インドへ旅立つ彼に貯金の6000フランを与える。それが発覚して父から過酷な罰を受け、目撃した母は心痛のあまり病死。老人は明敏な資本家でもあったのだが、年をとるにつれ吝嗇がますます高じる。その死後、ウージェニーは、シャルルにも裏切られ、ボンフォン裁判長と形ばかりの結婚をして、慈善事業に余生を送る。彼女の愛情もまた、父の物欲に対抗しうる激しい情熱として描かれている。
[平岡篤頼]
『水野亮訳『バルザック全集5 ウジェニー・グランデ』(1973・東京創元社)』