改訂新版 世界大百科事典 「ウートーン」の意味・わかりやすい解説
ウートーン
U Thong
タイ中西部にある古代遺跡。バンコクの北西約100kmに位置する。タイ史を考える上での最古の遺跡の一つで,出土するテラコッタ製の浮彫(鉢をかかえた仏僧等)の様式から,インドシナに栄えていた扶南国(1~7世紀)時代にまでさかのぼると考えられた。しかし,出土する遺品はおもにドバーラバティ王国(6~11世紀)時代のもので,この地に現存する都の跡もモン族によるその王国時代のものとみなされている。都の跡は,ほぼ南北に長い(約1.7km)楕円形をなし,当時は周囲が水濠で囲まれていた。幾つかの遺構が発掘によって明らかにされているが,すべて煉瓦造りの小型の寺院基壇部のみである。出土品には7世紀の美しい石灰岩製の法輪をはじめ,仏像や奉納板,また7世紀ころ(?)の銅板碑がある。なお,この地はタイ族の美術の時代(12~15世紀)には,ウートーン様式の仏像の発祥地となった。
執筆者:伊東 照司
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