静岡県東部、伊豆半島のほぼ中央、相模灘(さがみなだ)に面した観光温泉都市。1947年(昭和22)伊東町と小室(こむろ)村が合併して市制施行。1955年宇佐美(うさみ)村、対島(たじま)村を編入。1938年(昭和13)現JR伊東線が開通して温泉場として急速に発達、熱海(あたみ)とともに東京の奥座敷といわれる。1961年伊豆急行線(伊東―伊豆急下田駅間)が開通。国道135号のほか、伊豆スカイライン、主要地方道の伊東大仁(おおひと)線、伊東修善寺(しゅぜんじ)線などが延び、奥伊豆の玄関口として観光業が中心産業となっている。面積124.10平方キロメートル、人口6万5491(2020)。
[川崎文昭]
宇佐美火山、天城(あまぎ)火山、大室(おおむろ)火山群の活動で堆積(たいせき)した溶岩や、火山灰で原形がつくられた。その後、美しい大室火山(コニーデ)や、一碧(いっぺき)湖が出現。市街地や平野部は伊東大川(松川)の沖積作用による。気候は温暖である。伊東の地名は湯いずる国(伊豆)の東にあるという意味からおこったといわれる。平安末、狩野(かの)氏から出た伊東祐隆(すけたか)(祐親(すけちか)の祖父)が伊東荘(しょう)を形成したといわれる。江戸時代には幕府直轄地を経て、韮山(にらやま)代官支配地となった。また、伊東は江戸時代から東伊豆の中心地であり、風待ち港の機能を果たしていた。明治以後、温泉の開発が進み、東伊豆では熱海とともに温泉都市、観光地として発展している。さらに最近では、別荘地や住宅団地の造成も活発となっている。
[川崎文昭]
農家数は661戸(2015)で、ミカン栽培が中心。果樹園が全耕地の約50%を占め、一部は観光ミカン狩り園に開放されている。ツツジは全国有数の産地である。水産業は明治から昭和初期まで産業の中心であった。現在は沿岸漁業の不振と、漁業従事者の不足で、水産業者は激減した。水揚げは、サバがもっとも多く、京浜、阪神方面に出荷されるほか、干物(おもにアジ)として観光土産(みやげ)となっている。また、相模灘に面した川奈港はブリ漁業で知られる。
[川崎文昭]
西に天城山系、東に相模灘を望む風光明媚(めいび)な所で、大半が富士箱根伊豆国立公園地域に指定されている。約800本の源泉を有する伊東温泉を中心に、名所旧跡が豊富である。とくに、鎌倉時代の史実、伝説に富み、物見塚(ものみづか)公園(伊東祐親(すけちか)居住地)、伊東祐親の娘八重(やえ)姫と源頼朝(よりとも)が逢瀬(おうせ)を楽しんだ音無(おとなし)神社、伊東氏累代の菩提(ぼだい)寺の東林寺などがある。また、観光地としては、城ヶ崎(じょうがさき)海岸、浄ノ池、汐吹(しおふき)岩、大室山、伊豆シャボテン動物公園、伊豆ぐらんぱる公園、池田20世紀美術館、海水浴場、川奈ゴルフ場、一碧湖、伊豆海洋公園、小室山公園、奥野ダムと松川湖などがある。年中行事には、1月(隔年)の新井神社の裸(はだか)祭、4~5月の小室山公園つつじ祭り、7月の松川タライ乗り競走、8月の按針(あんじん)祭、11月の音無神社の尻つみ祭りなどがある。
[川崎文昭]
『『伊東市史』全2巻(1958、1962・伊東市)』
静岡県東部,伊豆半島東海岸の市。1947年伊東町と小室村が合体,市制。55年宇佐美・対島の両村を編入し,現在の伊東市となった。人口7万1437(2010)。天城山を背に相模灘に向かって開ける観光保養都市。古くは伊東荘,宇佐美荘があり,伊東氏居住の地であった。市域の約半分が富士箱根伊豆国立公園地域にあたることもあり,商業,サービス業をはじめ,伊東,川奈,富戸(ふと)の漁港を中心とした水産業においても,観光との結びつきが強い。伊東の地名の由来は,〈湯いずる国(伊豆)の東〉にあたることによるといわれる。伊東温泉の起源は800年ころといわれるが,慶長年間(1596-1615)には湯小屋があり,御汲湯として江戸城に送られた。かつては和田,猪戸,出来湯の3湯であったが,大正以降開発が進み,1938年の国鉄(現JR)伊東線開通後,急激に発展し,南伊豆への玄関口となった。50年に国際観光温泉文化都市に,55年に富士箱根伊豆国立公園に指定された。61年伊豆急行(伊東~下田)が開通した。源泉数は800をこし,湧出量は毎分3万4000l。泉質はボウ硝泉,単純泉,食塩泉で泉温は27~57℃。海食崖の城ヶ崎海岸,円錐火山大室山周辺から堰止湖である一碧(いつぺき)湖畔までの先原溶岩台地(伊豆高原)にはサボテン公園,池田20世紀美術館などがある。
執筆者:塩川 亮
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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