エリニエス(読み)えりにえす(その他表記)Erinyes

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エリニエス」の意味・わかりやすい解説

エリニエス
えりにえす
Erinyes

ギリシア神話の復讐(ふくしゅう)の女神たちで、アレクトティシフォネ、メガイラをさす。単数形はエリニスErinys。彼女らは、クロノスによって切断されたウラノスの男根の血の滴りから生まれたとされる。翼をもち、頭髪は蛇の姿で、つねに鞭(むち)と松明(たいまつ)を持ち、罪人を追って苦しめたのちに彼らを錯乱させる。とくに血縁者を殺した者に対しては、死してのちも復讐の手を緩めず、未来永劫(えいごう)にその魂を責め続ける。母親殺しの罪を負ったオレステスは、彼女らに追われて国から国へとさまよい、ついには精神を錯乱させられたが、アテネ女神の力添えによってその罪から解放された。人々は、彼女らに対する畏怖(いふ)の念から、エウメニデス(好意の女神)またはセムナイ(厳かな女神)ともよんだが、エテオクレスとポリネイケスの兄弟を対立させたように、ときには憎しみの種を播(ま)くこともあった。

 なお彼女らは、ローマ神話においてはフリアエ(狂気の女神)、ディラエ(不吉な女神)とよばれた。

[小川正広]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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