改訂新版 世界大百科事典 「エリュトラ海案内記」の意味・わかりやすい解説
エリュトラ海案内記 (エリュトラかいあんないき)
Periplus maris Erythraei
ローマ帝国と東方世界との海上貿易の事情を記した書物。著者はエジプトに住むギリシア人商人あるいはギリシア人船乗りとみられる。本書の成立年代については,紀元40-70年,70-80年,95-130年など異説が多い。エリュトラ海とは狭義には紅海を意味するが,本書ではアラビア海,ペルシア湾,インド洋,ベンガル湾なども含む広い意味に使われ,これら海洋に面する沿岸各地の港市の位置や,そこで取引される商品に関する詳細な記事が載せられている。ローマ帝国とインドとの貿易は,当時,アラビア半島南岸からインド西海岸に直行する遠洋航路を利用して活発に行われていたが,本書はそうした貿易活動のもようを具体的に伝える貴重な文献である。本書には村川堅太郎による優れた邦訳(1946)がある。
→ヒッパロスの風
執筆者:山崎 元一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報