ペルシア湾(読み)ペルシアわん(英語表記)Persian Gulf

翻訳|Persian Gulf

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペルシア湾」の意味・わかりやすい解説

ペルシア湾
ペルシアわん
Persian Gulf

イラン南西部とアラビア半島の間に横たわるインド洋付属海。アラブ諸国ではアラビア湾という。沿岸にイラン,イラククウェートサウジアラビアカタールバーレーンアラブ首長国連邦オマーンの諸国がある。イラクの南東部を流れるシャットルアラブ川河口から,南東方のホルムズ海峡まで全長約 990km,幅 55~340km。面積約 24万1000km2水深は浅く,110mをこえる箇所も局所的にはあるが,90m以上の水深はごくまれである。海底地形は湾央軸を境に非対照的であり,イラン側は構造的に不安定で,傾斜が大きい。相対的にアラビア側はゆるやかである。湾奥とイラン側の海底は泥で,アラビア側は砂または泥質砂によって覆われている。気候は一般に高温多湿。降水量は年平均 294mm。古代からメソポタミアインドを結ぶ重要な海上交易路。バーレーン島付近の浅海は古来真珠の産地。20世紀以後ペルシア湾沿岸および海底で石油資源の開発が進み,世界有数の産油地域に発展した。1980~88年のイラン=イラク戦争ではタンカーの航行障害が世界的な注目を集め,1991年には湾岸戦争の舞台となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペルシア湾」の意味・わかりやすい解説

ペルシア湾
ぺるしあわん
Persian Gulf

南西アジアにある広大な湾。アラビア半島の北東岸とイランの南西岸によって画され、東端はホルムズ海峡を経てオマーン湾へと通じる。ペルシア語ではハリージェ・ファールスKhalīj-e Fārsといい、アラブ諸国はアラビア語で「アラビア湾」の意ハリージュ・アル・アラビーKhalīj al-‘Arabīを慣用する。長さ約900キロメートル、幅250~350キロメートル、面積約23万9000平方キロメートル。水深は最大170メートルに達するが、山地が海に迫っているイラン側が、砂浜の広がるアラビア半島側に比べて深い。北西端のシャッタル・アラブ川の河口付近には三角州の発達がみられる。水温は平均24℃、8月には32℃にも達し、表面塩分は平均約37、水域によっては約40を示す。湾岸にはイランのほか、イラク、クウェート、サウジアラビア、バーレーン、カタールおよびアラブ首長国連邦がある。

 古くから天然真珠の採取や漁業が営まれてきたが、20世紀に入ると湾岸や海底で相次いで油田が発見され、世界的な産油地帯として注目されるようになった。ラス・タヌラ(サウジアラビア)、ミナ・アル・アハマディ(クウェート)、ハル・アル・アマヤ(イラク)、ハールク島(イラン)などの石油積出し港がある。天然ガスの開発も進み、石油、天然ガスを原燃料とし、それらの販売、採掘利権料収入を資金とした工業化も湾岸各地で進んでいる。エビイワシマグロなどの水産資源も豊富。

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