改訂新版 世界大百科事典 「エンセテ」の意味・わかりやすい解説
エンセテ
Abyssinian banana
Ensete ventricosum(Welw.)Cheesm.
エチオピアや東アフリカで栽培されるバショウ科の植物。偽茎(葉柄が巻き重なって茎のようになった部分)や根茎にためられたデンプンを食用にする。
全形はバショウやバナナに似ているが,偽茎は太く,大きなものでは基部の直径50cm,高さ3m以上になる。葉は闊大でその間から,花序を出す。基部には雌花群が,先端部には雄花群が段をなしてつくこともバナナに同じである。ただバナナやバショウのように芽苗をつくらないため,開花結実した個体は枯死する。種子は大きく直径1cm以上あり,多量のデンプン質胚乳を有する。
開花直前に主として偽茎に蓄積されたデンプンを採り,食用にする。また種子も食用にされるし,偽茎からは繊維が採取される。栽培品種もいくつか分化しており,エチオピアでは,もっとも古い起源の栽培物と考えられている。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報