改訂新版 世界大百科事典 「エンリケ4世」の意味・わかりやすい解説
エンリケ[4世]
Enrique Ⅳ
生没年:1425-74
カスティリャ王。在位1454-74年。不能王という不名誉なあだ名を持つ。生来の優柔不断な性格から,中世末期の混乱の中にあって野心的な貴族や隣国アラゴン王の挑戦に有効に対処しえず,いたずらに妥協を繰り返して王権の失墜と弱体化を招き,国内の混乱はその極に達した。なかでも自分の娘フアナに代わって反対派が推す王の異母弟アルフォンソを,そして同王子の死後はその姉イサベルに王位継承権を認めた(1468)ために,国内はエンリケ以後をめぐってフアナ派とイサベル派に二分,その背後にそれぞれポルトガルとアラゴンがくみするという外国がらみの内戦状態に陥った。なお,王の不能は病理学上の類宦官症状eunuchoidismであり,そのためフアナ王女との父子関係を否定する風説も流れたが,その確証は何もない。
執筆者:小林 一宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報