改訂新版 世界大百科事典 「オルドバイ渓谷」の意味・わかりやすい解説
オルドバイ渓谷 (オルドバイけいこく)
Olduvai Gorge
東アフリカのタンザニア北部にある二つの渓谷がY字型に合流する地域の名称および遺跡群。チョウの採集をしていた研究者が落ちそうになって発見したという逸話があるように,真っ平らな草原に深い渓谷が刻まれている。オルドバイは,本来はオルドパイOldupaiという多肉性植物の名称であって,その付近に今でもたくさん自生している。そのため,現地の小さな博物館の展示室にはOldupaiと表記されている。1931年以来,ケニアのリーキー研究者一家と関係者によって調査が続けられている。渓谷には,190万~60万年前の地層が露出していて,猿人から原人までの化石人骨,多くの動物化石,オルドバイ型剥片やアシュール型ハンド・アックスなどの石器が数多く出土している。著名かつ重要な人類化石としては,かつてはジンジャントロプスといわれたパラントロプス・ボイセイの頭骨(OH 5),ホモ・ハビリスの模式標本下顎骨など(OH 7),ホモ・ハビリスの足骨(OH 8),ホモ・ハビリスの骨格(OH 62),ホモ・エレクトスの頭骨(OH 9),ホモ・エレクトスの寛骨と大腿骨(OH 28)などがある。
執筆者:馬場 悠男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報