四足動物の後肢の大腿部の中軸をなす,両端の広がった円柱状の骨。上端はほぼ球形をなし,骨盤をつくる腸骨・坐骨・恥骨の会合点にできた円形のくぼみ(爬虫類中の一グループである主竜類とその子孫に当たる鳥類では,貫通した孔になっている),すなわち寛骨臼にはまりこんで股関節をなし,広範囲の回転ができる形になっている。下端は,下腿部の骨格である脛骨および腓骨と,膝関節によって連結する。主竜類,鳥類,哺乳類では上部の外側に腸骨筋の付く大転子という突起がある。大腿骨は,四足動物の祖先であった硬骨魚類の総鰭(き)類の腹びれの基部の骨格に由来するものだが,上記のような位置関係と概形は,原始的両生類から鳥類や哺乳類に至るまで本質的にほとんど変化していない。
執筆者:田隅 本生 ヒトの大腿骨は人体中最大の骨である。管状骨で,中央部すなわち体は内部に大きな骨髄腔があるが,上下の骨端部は内部が海綿質になっている。なお体の前面および両側面は滑らかであるが,後面にはその中央部に大腿骨稜という縦のざらざらした隆線があって,筋肉の付着部をなしている。大腿骨の上端部は複雑な形の突起をつくり,そのうち後上方に突き出るものを大転子,内側下方に出張るものを小転子,内側上方へ伸びるものを大腿骨頭という。大転子と小転子には骨盤に発する多数の筋が付き,両転子をてこにして大腿骨の運動(大腿骨が地上に固定しているときは腰の運動)を起こさせる。大腿骨頭は内側上方へ伸び出す円柱状の大腿骨頸の先に付く半球状のかたまりで,滑らかな関節軟骨で包まれ,骨盤の寛骨臼にはまりこんで股関節をなす。大腿骨の下端部は太くなって,脛側顆,腓側顆という糸巻状の関節面をつくり,下腿の脛骨と接して膝関節をかまえる。
→骨格
執筆者:藤田 恒夫
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人体の全身の骨のなかで最長の管状骨で、きわめて頑丈である。大腿骨は骨盤と下腿骨とを連結し、大腿の中軸となっている。ほとんど円筒状であるが、長軸に沿って10度くらいねじれ、前方にやや凸彎(とつわん)を示している。骨長は日本人の成人男子で約41センチメートル、成人女子では37~38センチメートルである。大腿骨の長さは身長によく比例する。全体として骨幹(骨体)と上下の両骨端からなる。この上骨端から上内側方向に骨幹と125~135度の角度で円柱状の大腿骨頸(けい)が出ている(この先端を大腿骨頭とよぶ)。大腿骨頭は軟骨で覆われた関節面で、骨盤の寛骨臼(かんこつきゅう)にはまり、股関節(こかんせつ)を構成する。骨幹の下端は著しく肥厚して両側の後下方に突き出た外側顆(か)と内側顆とをつくり、脛骨(けいこつ)との関節面となる。骨幹の下端前面には膝蓋骨(しつがいこつ)と関節をつくる膝蓋面がある。直立すると大腿骨は垂直ではなく、上方は骨盤の幅だけ左右の大腿骨は離れているが、下方はしだいに近づく。この大腿骨の傾斜には個人差があるほか、一般に女子のほうが男子よりも傾斜が大きいとされる。また、大腿骨頸はとくに老年者では骨折をおこしやすく、臨床上、老人骨折の代表的部分とされる。
[嶋井和世]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…寛骨はさらに腸骨,恥骨,坐骨に区別される。骨盤大腿骨thigh bone大腿の中軸をなす骨。長い棒状で,人体中最大の骨で,股関節で骨盤とつながり,膝関節で脛骨とつながる。…
※「大腿骨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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