改訂新版 世界大百科事典 「オーラブ2世」の意味・わかりやすい解説
オーラブ[2世]
Olav Ⅱ Haraldsson
生没年:?-1030
ノルウェー王。在位1015-28年。前半生をバイキングとしてすごし,のちノルウェー王となる。官僚による統治とキリスト教化による全国支配を目ざすが,これに反発する豪族たちと結んだイングランド・デンマークの王クヌットと争い,スウェーデンをへてロシアへ亡命(1028)。再起をはかり陸路北ノルウェーにはいるが農民軍の抵抗にあい,スティクレスタの戦で敗死。死後盲人治癒など奇跡説がうまれ,その死は殉教とされ,北欧最初の聖人となった(後世,聖オーラブと呼ばれる)。聖オーラブOlav den helligeはノルウェー中世において,国法,教会法,王権,教会特権,私的団体など,あらゆる権威の正当性の根拠であるとともに,北欧全体の守護聖人である。多くのスカルド詩,祈禱文,歴史叙述,聖人伝,聖像,民間伝承がつくられ,彼の足跡のある北欧各地でその死の日(7月29日)に民俗行事がおこなわれる。遺体の安置されたニーダロス(トロンヘイム市)の聖オーラブ教会は,7月29日から8月3日,中世を通じて巡礼の対象となった。
執筆者:熊野 聰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報