日本大百科全書(ニッポニカ) 「カラシン」の意味・わかりやすい解説
カラシン
からしん
characins
硬骨魚綱コイ目カラシン亜目カラシン上科Characoidaeの熱帯淡水魚の総称。おもに南アメリカ大陸とアフリカ大陸に分布するが、テキサス南西部、メキシコ、中央アメリカにも分布する。体は紡錘形から側扁(そくへん)形まである。多くのものは肉食であるために歯はよく発達している。ほとんどの種が体に鱗(うろこ)があり、脂(あぶら)びれがある(レビアシニ科の一部の種にはない)。口はあまり突出しない。7本の下尾軸骨に19本の尾びれ軟条が付着する。カラシン類は骨鰾(こっぴょう)類のなかでもっとも古いグループの一つであり、16科約1050種(南アメリカ大陸とその付近には250属900種、アフリカ大陸には30属150種)にもなり、形態と生態はきわめて多様である。猛烈な肉食で有名なピラニア、美しいネオンテトラ、洞穴にすむ目のないブラインドケーブフィッシュ、水面を滑走するハチェットフィッシュなどが含まれる。
ピラニア類は、カラシン科のセラサルムス属、パイゴセントルス属、ローズベルティエラ属の数種の総称で、別名カリバ。アマゾン川やオリノコ川の流域にすむ。ピラニア類でもっとも恐れられているのはセラサルムス・ニガーSerrasalmus nigerで、全長35センチメートルになり、ものすごい数で群れをなし、川に入ってきたウシやウマに襲いかかり、強い顎(あご)と鋭い歯で、たちまち肉を食べ尽くして骨だけにしてしまう。ワニ(アリゲーター)にも襲いかかるという。
テトラ類は、カラシン科のヘミグラムス属とハイフェソブリコン属の全長数センチメートルの美しい観賞魚の一群をさす。中央アメリカや南アメリカに分布する。1936年フランス人ラボーによって世界に紹介されたネオンテトラがとくに有名である。
ブラインドケーブフィッシュは、メキシコにはアスチアナクス・メキシカヌスAstianax mexicanusがおり、ブラジルにはステギクティス・ティフロプスStygichthys typhlopsがいる。メキシコ産の種には有眼型と無眼型がいて、かつて別種扱いにされていた。
[中坊徹次]